第17話:機械の知識と二人の少女

 の手型のところに触れた瞬間、大量の知識が頭に流れてきた。そのせいか、この部屋に散在する機械類の事が驚くほどに理解出来る。


 私はコンソールに向かい、様々な記録を読み漁った。


 ここの機械遺跡は何かを封印する為の施設のようで、世界に三ヶ所ほど点在しているらしい。しかもこの三ヶ所はシステムがリンクしているらしく、他の二ヶ所が沈黙した為にここのシステムの自衛機能が働き、スリープモードに入ったようだった。


「⋯⋯という事は、二ヶ所は封印が破られたという事⋯⋯?」


 すでにかなり危険な状況だった。私はさらに情報を調べてみた。


 封印されているものは、施設によって違うらしかった。一つ目は凶暴な魔獣、二つ目は対魔獣専用兵器、三つ目は拠点制圧兵器との事。ただしデータバンクが損傷しているらしく、詳細は分からなかった。


 ここの施設に封印されているのは拠点制圧兵器との事。最も危険そうなものが無事というのは不幸中の幸いだった。


 だが、凶暴な魔獣と対魔獣専用兵器の封印が解けたという割には、大きな事件は起きていない。他国にあるとはいえ、見た事もないものが解き放たれれば、その情報は広く知れ渡るはずである。それが無いというのは不自然だった。街中で聞き込みする必要がある。また調べる事が増えたな⋯⋯。






 必要な情報はだいたい調べた。ここへの立ち入りは機神の手を持つ者しか入れないようになっていたので荒らされる心配も無い。


「そろそろ引き上げようか⋯⋯」


「あ、ししょー」


「⋯⋯何してるの?」


「え?いやぁ〜見た事も無いものばっかりだったもので、つい⋯⋯」


 アイビスは周辺のガラクタを漁っていた。ほとんどは壊れているのでガラクタなのだが⋯⋯。


「これ、師匠のスキルで修復出来ませんか?」


「修復?」


「はい。師匠のスキルは確か修復や操作まで出来るものだったと思うのですけど⋯⋯」


「まぁ、確かに出来るけど⋯⋯」


 修復。そういえば、まだやった事は無かったな。


「試してみるかな⋯⋯」


「そうですよ!やってみましょうよ!」


「やけに元気だな」


「だって気になるんですもん」


「まぁ好奇心旺盛なのは良いことだけど⋯⋯」


 とりあえず、目の前のものを修復してみる事にした。


 手に取ったのは小さい箱のようなもの。小型の通信機らしい。手に意識を集中すると、スキルが発動したのが分かった。


「⋯⋯ん。直ったみたい」


「ホントですか?!」


「うん。でもこれだけじゃ分からないね」


 通信機一個だけじゃあ使いようが無い。


 それからもいくつか試してみたが、役に立ちそうなものは無かった。どうもいまいちスキルを使いこなせてないようで、機械に疎いのもあってか上手く修復出来なかった。知識だけあっても、機械に対しての理解が足りてないせいだ。それも仕方ない。何故なら今日知ったばかりだからね。


「⋯⋯ん?⋯⋯何だこれ?」


 近くに落ちてた端末を手に取る。何かの起動スイッチのようだ。老朽化していただけで破損した部分は無かったらしく、スキルでなんとか直せた。


「何ですか?それ」


「さぁ?とりあえず押してみるよ」


 カチリ。


「⋯⋯ぉお?」


 端末のスイッチを押すと、少し離れたところの床が動いた。二枚の床がスライドし、二つのやや丸くて大きな箱がせり上がってきた。確か、冷凍カプセル、だったか⋯⋯?初めての単語ばかりでまだ慣れない。


「し、師匠⋯⋯。コレは⋯⋯」


「⋯⋯えぇ」


 中にはそれぞれ人が収められていた。しかも少女が、しかも裸で。


「ししし、ししょー!見ちゃダメですっ!」


「⋯⋯ちょっ!」


 中を見るなりアイビスに目隠しをされた。まぁ気持ちは分かる。もしこれが逆だったら私も同じ事をしてたかも⋯⋯。


「さぁ。これが分かりますか?そのままで修復してください」


(見ないと分からないんだけど⋯⋯。素直に従っておこう)


 目隠しをされたまま、アイビスに誘導されながら修復する。見えて無いけど、大丈夫なのかな⋯⋯?


機神の手メタリクスハンドによる修復を確認。起動します』


「え?⋯⋯えぇ〜?」


「何?どうなってるの?目隠し取っていい?」


「ダメです!まだ取っちゃダメです!」


「⋯⋯⋯⋯」


「初めまして、ご主人様マスター。なんなりとごめ」


「ま、待ってください!その前に、服を!何か服を着てください!」


「了解。ベーシックアーマー、装着します」


 何やら機械的な音がカチャカチャと鳴り、やがて音が止んだ。


「師匠、もう良いですよ」


「やっとか⋯⋯」


 許可が出たので、遠慮なく目隠しを取る。


「あぁ、見えるって素晴らしい⋯⋯」


「初めまして、ご主人様。なんなりとご命令を」


「なんでも聞いてあげちゃうよ〜♪」


 目の前には、全く同じ顔で、しかし口調は全く違う美少女二人が立っていた。

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