第16話:遺跡調査と機神の手
盗賊たちを街まで連行し、衛兵へと引き渡し、手続きを済ませた頃には夜になっていた。
翌日。
私たちは再度遺跡へと向かった。元々遺跡の調査が目的だったのだ。盗賊退治はついででしかなかった。これでようやく調べられる。
ギルドマスターは何も無いと言っていたが、私はそうは思えなかった。遺跡内へ入った時、微妙な違和感を感じたからだ。もしかすると、私の保有スキル《機神の手メタリクスハンド》が反応しているのかもしれない。
ちなみに、今日はアキナはいない。ついに店が完成したらしく、手続きと開店準備に取り掛かっている。なので、当分私たちとパーティーを組む事は無い。
「⋯⋯うーん。本当に何も無い⋯⋯」
遺跡の最深部。そこは大きな空間が広がるばかりで何も無かった。ただし、天井や壁、床などは見たことも無い未知の素材で出来ていた。鈍い色で僅かな光沢があり、表面はつるつるしている。そして何より、異常に硬い。
まず刃物が通らない。傷もつかず、逆に刃が欠けそうなくらいだ。火で熱してみても、熱くなるばかりで溶けたりはしない。謎すぎる。
「師匠」
「ん?」
「ここ、何か変な出っ張りがありますよ〜」
アイビスが何かを発見したようだ。
「⋯⋯何だこれ」
「なんでしょうね?⋯⋯もしかしたらこれ、指で押せるやつだったりして」
「うーん。とりあえず触ってみるかな⋯⋯」
謎の出っ張りを触ってみる。妙にざらざらしてて、壁の材質とは明らかに違う。年月が経ってボロボロになっている。
触っていると、何かしら手応えを感じたので押してみる。
カチリ。
「⋯⋯へ?」
押せてしまった。壁が一部変形し、下へと続く階段が現れた。
「えぇ〜⋯⋯」
「と、とりあえず、降りてみようか」
「⋯⋯は、はい」
とりあえず、階段を降りてみる事にした。
階段を降りた先には、衝撃の光景が広がっていた。
見たこともない素材で出来た、見たこともない道具(?)の数々が転がっていた。
見たことも無い、何かに似ているという事も無いので、表現のしようが無い。ただ、どれも『壊れている』ような感じはする。もしかしたら、これが昔話に出てきた『キカイ』なのだろうか?
大きな箱に窓がついていて、中は空洞、馬車の車輪よりも小さいながら妙に太い車輪のようなものがついていて⋯⋯。⋯⋯まさか乗り物?
「ほぇ〜⋯⋯。おかしな物ばっかりですね〜⋯⋯」
「ホントにね。なんなんだろうか、ここは⋯⋯」
「⋯⋯あれ?⋯⋯師匠。ここ、何か光ってません?」
「⋯⋯ホントだ」
アイビスが指摘したところは、他に比べてもさらに訳がわからない物だった。
壁に台がくっついているように見えて、表面に色んな出っ張りが無数にあって、しかも出っ張りの形が同じだったり違っていたり⋯⋯。もう理解が追いつかなくて説明出来ない。その出っ張りの一部が僅かに光っていた。太陽光とも魔法の光とも違う、これまた理解出来ない謎の光⋯⋯。
その光の横に、何故か手型がくり抜かれている部分がある。あからさまに「手を置け」と言わんばかりに謎の存在感を放っている。
「⋯⋯手を置けという事か?」
「どうします?」
「とりあえずやってみよう。⋯⋯ちょっと怖いけど」
恐る恐る手型に手を置いてみる。
すると。
目の前のものが突然光りだした。同時にどこからともなく声が聞こえた。
『
「え?え?⋯⋯⋯⋯っ!」
「ししょー!」
「っ!⋯⋯何だ、これ⋯⋯?!」
頭の中に色々な情報が次々と浮かんでは消えていく。同時に頭が鈍い痛みに襲われる。我慢出来ないほどではないけれども、結構痛い。
少しして、痛みが治まった。目の前のモニターには、色んな情報が映し出されていた。
⋯⋯ん?
「あれ⋯⋯?⋯⋯これ、理解出来る⋯⋯。なんで?見たこと無かったはずなのに⋯⋯」
「師匠。大丈夫ですか?」
「え?⋯⋯あぁ、うん。一応大丈夫」
「⋯⋯良かったぁ。師匠、いきなりうめき声出すから心配しましたよ⋯⋯」
「あぁ、そういう事。⋯⋯うん、大丈夫。心配させてごめん」
謝りながら、アイビスの頭を撫でる。⋯⋯徐々にクセになりつつある気がする。
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