第4話:初依頼と特訓

 私とアイビスは森に来ていた。


 パーティーを組んでの初依頼は木の実類や薬草等の採取だ。1つ2つ程度ではランクの低さも相まって大した稼ぎにはならない。なので5つ程受けた。どれも普段からこなしてる依頼なので見つからないという事もなく、昼過ぎには全部終わった。


 ちなみに、今回達成した依頼の報酬金額は5つ合わせて1500フロン。宿代が一人辺り一泊700フロンなので、ちょっと心許ない。


 ギルドに戻り報酬を受け取った私たちは、昼食後、草原に出た。アイビスの修行の為だ。彼女はどうやら魔法が使えないようなので、短剣術と体術を中心に鍛える事にした。運動は得意らしく、その身のこなしはとても軽快であった。関節の可動域も広く、反応も良い。手先も器用なようで、短剣の扱いも上手かった。


「⋯⋯凄いな」


「⋯⋯へ?」


 私の呟きが聞こえたのか、アイビスが変な声を上げる。⋯⋯小声なのによく聞こえたな。


「⋯⋯正直ここまでとは思わなかった。まだ粗さが目立つが、駆け出し冒険者としては十分過ぎるくらいだ」


 それが正直な感想だった。お世辞でもなんでもない。力不足はしょうがないとしても、短剣の扱いと身のこなしは見事であった。駆け出し冒険者同士、1対1での戦いならば問題なく勝てるだろう。


「えへへ、⋯⋯ありがとうございます。冒険者になると決めてから、少しの間色んな職業について勉強してました。その中でも、短剣の扱いが中心のアサシンやローグの方が自分に合ってる気がしたので、それらの戦闘術を片っ端から調べあげて独学で特訓してました」


「⋯⋯なんと」


 一人で、それも独学であれだけ動けるようになったとは⋯⋯。おそらく才能か、あるいは『スキル』か。これは、磨けば光る原石かもしれない⋯⋯。


「それだけ動けるなら、戦闘は問題ないかもしれない。明日、一度討伐系の依頼を受けてみようか」


「⋯⋯え、いきなりですか?!⋯⋯わ、私、大丈夫でしょうか⋯⋯?」


「それを確かめる為にも受けるんだ。大丈夫、私もついてるんだ。いざとなったらちゃんと守るよ」


「⋯⋯本当ですか?それなら、まぁ⋯⋯、良いですけど⋯⋯」


 アイビスは渋々ながらも頷いてくれた。不安な気持ちはよく分かる。分かるのだが、冒険者をやっていく以上、魔物との戦闘は避けられない。それにランクが上がれば、盗賊等の人間が相手でも戦わないといけなくなる時が来る。なら、実戦経験は少しでも多く積んでおいて損はない。


 私は、不安な表情を浮かべたままのアイビスの頭を撫でた。頭を撫でられるのが好きなようなので、こうすれば少しは落ち着くだろう。


「ふぁぁ〜⋯⋯」


 私の思った通りだった。アイビスは気持ち良さそうに目を閉じ、なんとも言えないような声を漏らす。少しは不安が取れたようだ。


 ひとしきり撫でた後、また少しアイビスに特訓をつけ、そして日が暮れる前に街へ戻った。

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