間違いなく君だったよ

新吉

第1話 間違いなく君だけだよ

 間違いなく君だけだよ

 僕のことを泣かすのは


 僕は涙は飾りじゃないと思っている。誰かが泣いているのは怖い。胸のこの辺がきゅっとなる。だいたいこの辺だ。正直僕なんかの涙では、他の誰かをきゅっとさせることはないと思うが、僕は泣かない。泣きたくないと思っている。


 だから今まで中学生になるまで泣いたことはない。卒業式も犬に噛まれた時も、肝試しも怖い先輩が脅してきた時も泣かなかった。あくびはノーカウント!


 無意識に出る涙は仕方ない。感動ものの映画を見た。映画の主人公も泣き、映画館のみんなもすすり泣きの嵐。あのときのもノーカウントだ、あの状況で泣いてしまうのは仕方ない。涙は悪ではない。でもウソ泣きや目薬はやっぱり少し嫌だ。


 君のことそんなに強いと思わなかったんだ。我慢できないと思わなかった。僕はできれば他の誰かの涙もみたくないから僕が君の相手をしたんだ。たいして慣れてない僕に、先生は優しく教えてくれた。たてと横と、よし!

 リズミカルに刻み出すともう涙がこぼれだした。


「うっ」


 と、止まらない。こんなに溢れるのか。


 僕は今調理実習でハンバーグを作っている。挽き肉を準備していた同じ班の女子と目が合う。


「きゅ」


「?」


「あたしかわったげるよ!」


「や、やめろ皆の涙は見たくないんだ!」


「いいからさっさとやっちゃいなさい」


 先生が急かした。よく切れる包丁で手早くやってしまうのがいいらしい。


 間違いなく君だけだよ、

 玉ねぎのみじん切り

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