第128話 鎖
窓に映るのは大きな白い鳥
真白な翼をまっすぐ広げ
空へと羽ばたこうとしている
風が木々をゆらす午後三時
見るともなく目に入る景色
鳥はまっすぐ視線を空へと向け
羽を何度もばたつかせた
いつまでも飛び立たない鳥は
まるで飛べないかのようだ
立派な羽と飛びたいという意志を持ち
それなのに一向に踏み出せない
哀れでむなしい飛べない鳥
せつなさに目を逸らしたとき
ふと目に入った錆びた鎖
鳥はその細い体を縛られて
この地に繋がれているようだった
逃れようともがく鳥
でもさらに固く結ばれて
動くごとに体へと喰い込む鎖は
徐々に傷口を広げ血が滲み出す
羽根の白は少しずつ深紅に染まる
場違いなほどに美しく
ああ、こんなにも求めているのに
こんなにも空に焦がれているのに
なぜ空は彼を受け入れない
なぜ地は彼を開放しない
鳥の瞳が映す空は曇りのない澄んだ青で
でもその体は血に染められた深い赤で
それを見ている僕は苦しくて
咄嗟に窓を叩き割った
粉々に砕けた硝子が宙を舞う
日差しを受けてキラキラと
涙のようなその奥に
いるはずの鳥は跡形もなくて
呆然と立ち尽くす僕の目に
飛び込んできたきたのは血まみれの
鎖に繋がれて動けない
紛れもない自分自身の姿だった
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