第122話 ぼんやり


今をどう形容していいのか分からない

確かに立っていたはずの地面が

不意に溶けて消えてしまったみたいに

なんとなくふわふわと足下が定まらない


考えても考えても思考は宙へと霧散する

こういうときはただ時間の流れに

この身を任せてしまえばいい


何もない空間に意識を放り出せば

手も足も力まずいられるはずで

取り留めのない思いだけが

はらはら空へと舞い堕ちてゆく


これはきっと白昼夢だ

こんなにも無意味なところにいるなんて

現実にはあり得ないはすだから


それでも実はこの世界の中に

意味のあることなんてほとんどなくて

だいたいが揺蕩う木の葉みたいなもの

いつの間にか風に流れて朽ちていく


ぼんやりと定まらない視界に 

映る舞い散る黄色い小さな葉

ただそれを見送るだけの

一日がまたここから始まる


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