第118話 少年はドアを見る


少年はドアを見る

失うことに慣れた目で

その向こうにあるだろう

自由で殺伐とした世界を

羨むような蔑むような

なんとも言えない目の色は

絶えず妖しく揺らめいて

どうにも人を不安にさせる


少年はドアを見る

固く閉ざされたこのドアが

開かれるのは善か否か

邪気のない視線で見定める

解き放たれたい欲望と

奪われたくないという思いが

絡み合い解かれることもなく

少年の冷めた瞳を揺らす


少年はドアを見る

希望も絶望もなくて

あるのは空っぽの体

開かれる時を待つでもなく

閉ざされた今を憂うでもなく

ただここに蹲る己に

待ち受ける未来を知るために

少年はドアを見る

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