第93話 冬の中

 

ほんの少しずつ日が長くなって

確実に春へと歩みは進む

それでも寒さは強くなり

きゅっと巻き付けたマフラー

身を守るように肩をすくめ 

吹き付ける風に対峙する


舞い散る枯れ葉の小さな渦

時間は淀みなく流れていく

取り残されまいと踏みしめる足

震えそうになるのをこらえて

そっと手を差し出してみれば

ほら、寒ささえ味方のよう 


吐き出す白い息をはずませ

今この道を駆けていく

過去でも未来でもなく

ただ今あるこの時間がいとおしくて

心をこの冬へと寄せる

ちらつくささやかな雪のように



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