第59話 浸透


月さえも見えない

雲に覆われたこんな夜は

なぜかひどく気だるくて

持て余す重い体

冷たい布団に逃げ込んで

進まぬ時をやりすごす


輝いているはずの星も

街を照らしている灯りも

今の自分には見えなくて

見えたとしてもまぶしすぎて

逃げる場所もない明るさは

徐々に呼吸を奪っていく


喘ぐように取り込む酸素は

全身をまわる毒のようだ

濁った空気に慣れてしまった

肺をジワジワと蝕んで

隠れることすらできやしない

さらけ出される醜い裸体


月さえも見えない

がんじからめのこんな夜は

抱いている意識の全てを

闇の中へ深く沈めて

持て余す重い体

浸透していく夜に

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