第11話 夜のにおい


深い深い夜の底に

遠く響く車の音

声を出すのも憚られる

そんな静けさの中

確実に進行していく

闇に溺れぬようにと

もがくその手が掴む

白い時の欠片は

濃密な夜のにおいに

おびき寄せられた

哀れな蝶の亡骸に

どこか似ている気がした

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