ホテル・グレイブヤード

小花ソルト(一話四千字内を標準に執筆中)

 

第1章

第1話   グレイブヤードを継ぐ男

物心つく頃には

すでに 彼の仕事を 手伝っており

彼の生活を 補佐していた


彼は ずいぶんと 風変わりな

墓守だった


歯車のみで動く

謎の小型の 機械を 携帯し

それを 駆使して

仕事を していた


私と どのような 関係にあるのか

いまいち はっきりしない人だったのは

彼自身が そう望んだからだろう



私が 多分成人したであろう 歳に

彼は いよいよ

介護がいる 体となってしまった



ある日 彼が 託したのは

手のひらに 置ける 小ささの

あの古びた機械だった


私がこれを 初めて見たとき

彼の跡を 継ぐためには

腕の良い 修理屋を

見つけることだと 察した


彼が修理の仕方を 至極丁寧に

私に 語り始めたからだ


針金を 金の歯車に 差し込んで

無理やり がちゃがちゃ


私が跡を継ぐためには

腕の良い 修理屋を

見つけることだと 察した



私は彼に 嘘をついた

腕の良い 修理屋が 見つかったと


それを聞いて 彼は喜んでくれた


脈々と受け継がれてきた この尊い

と 彼が認識している 職業が


後世に残る 可能性を

見出したからだろう


彼は 私の 嘘に感謝し

涙した


良い弟子を持った と


私は彼が旅立つ その日まで

ずっとそばにいた


この嘘が

彼の安寧の 翼となることを

今でも 願っている


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