技術者

草壁葛

創世録

そこには天があり、大地があった。


天から使いが下って来た。

地から使いが上がって来た。


天の御使みつかいは雲を作り、雨を降らせ、恵みを授けた。

地の御使いは山を作り、木々を生やし、恵みを授けた。


世界を創る途中で御使いたちの間に諍いが起こった。

天の御使いは風を起こし、雷を落とし、木々を折った。

地の御使いは火の山を作り、灰を撒き散らし、天を汚した。


諍いの絶えない御使いたちの架け橋となるために、人が生まれた。


人は雨を溜め、水を飲んだ。地を耕し、食物を作った。

人は毎日恵みに感謝し、天地を讃えた。

人の献身により、御使いたちの間の争いは消えた。

こうして止まっていた世界創造が進み、人は数を増やしていった。


世界が出来上がり始めたある時、御使いたちは橋渡しの礼を言いに人の住処を訪れた。

人はせっせと畑を耕していた。それを見た御使いは驚いた。

「まだ畑を耕しているのか」

人は言った。「こうすることでしか恵みを授かれませんから」


「かわいそうに」


御使いたちは口を揃えて言った。

「世界創造に協力してくれた礼として、君に私たちの技を授けよう。百もあれば、もっと生活が楽になるに違いない」


天と地の御使いは一日に一つ、交互に人に技を授けた。

百日経った後、人は死んでしまった。




──しかし授かった百の技は子に受け継がれた。

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