愛が重い私は、来世を誓った騎士と結ばれたい
お花見茶
愛が重い私は、来世を誓った騎士と結ばれたい
プロローグ
「姫……申し訳、ありません……。どう、やら……私はここまでのよう……です」
「いや……いや!!お願い、そんなこと言わないで!!」
森の中、一人の男の命が尽きようとしていた。名はルディメル・セイルド。二大大国の1つシェルフィーツ王国の姫に仕える専属近衛騎士だ。そして、そのルディメルを腕に抱いているのは、ルディメルが仕える姫ミューシェン・フィオレンツァ・シェルフィールドだ。二人は神聖都市クローズにある大聖堂からの帰り、賊の襲撃に会い、ルディメルはその時に誤って負傷してしまったのだ。医者も居らず、怪我の治療も出来ず、どんどんと血が流れ出た結果、その命は尽きようとしていた。
「姫…私の夢を……聞いて、くれますか……?」
「な、何?」
ミューシェンは、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ルディメルに答える。そんなミューシェンの様子に、ルディメルはフッと笑い、ミューシェンへと手を伸ばした。
「愛して、います……」
「!!」
「貴女に、出会った頃から……ずっと……貴女と結ばれることを……願って、いました……。叶わないことを…知りながら……願わずには、いられ……なかった」
ミューシェンの頬をするりと撫でて息絶え絶えに言うルディメルに、ミューシェンは顔をさらに歪めた。
「泣かないで……ください……。これからは……誰も姫の、涙を受け止められない……んですから……」
涙を掬うために触れた指は切なげで、ミューシェンはその手にそっと自分の手を重ねた。
「っは……私は、もう……駄目そうです……最後に、貴女の……顔を見れて……良かっ、た」
―――ルディメル、来世ではきっと……
薄れゆく意識の中聞こえたその声に、ルディメルは頬を緩めた。そしてパタリと地へと落ちたその手は、もう2度と動くことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます