非常時に使える筈の異世界知識

みこた。

第0話

「__はぁ、はぁ、はぁ…。」

高級感のある紅色の絨毯を踏む足音が、館中に響き渡る。

少女は自分の足を必死に動かし、頬を伝う汗など気に留めずに走る。

「……ギギギギギギギギギ。」

理由は一つ。後ろから迫ってくる異形の化物から逃げる為だけにある。

化物の大きさはおよそ5メートル。左右と思われる部分にはよく磨かれた鎌が。下半身は芋虫のような容姿だ。上半身は蜘蛛、そして背中には不気味なほど綺麗で麗しい羽が生えていた。

「__!?」

少女は目を見開いた。その目に映るのは壁だった。前には壁、後ろには化物。だが、少女は絶望したような表情は見せない。

「……*-$%”≒∽¬∴°」

美しい少女の口から発せられたのは、人間が聞き取るのは不可能な言葉のようだった。

「\~:"&#∅≪≒≠……。」

すると、少女の手から透明な水が発生した。水は自我を持っているかのように少女の周りに絡みつく。竜巻のように少女を囲むと、化物へと向かった。

「ギギギギギギ…。ガアアアアアアアアァァァァ!!!!」

化物は機械のような、威嚇するような醜い声を上げ、少女へ近づいてゆく。

「お願い……っ。助けて…!!」

少女は何かを悲しみ、嘆くような表情を見せる。少女の雲一つない空のような淡い水色の瞳から、涙が溢れ落ちた。

「ギアアアアアアァァァァァァ!!!」

その瞬間、化物は嬉しそうに少女に向かって鎌を振り下ろした__。

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