第21話 納得の入国審査
コロナ禍のおり、渡米しての入国審査が厳しいのは仕方がないと思うけど。目にした表示に書かれてたのは。
「えーと何だって? ウィルス対策のため、所持する発酵食品の申請をしろ?」
発酵って乳酸菌などの菌類がやるから、ウィルスとは違うはずなんだけど。まぁ、この手は言い争っても仕方がない。
列に並んでしばし待つ。
やがて自分の番となり、金髪碧眼のオバチャンに「次の方!」と声をかけていただいた。
そして、鞄から日本を代表する発酵食品を取り出す。これを食べないと、朝御飯にならないからね。
「では、検査のためにこちらの所定の容器に移してください」
一食分を無償提供するのか。なら、もうひとパック買ってくるんだった。
泣く泣く、発泡スチロールのパッケージをパリッと開けて、ビニールのシートを取り除くと、内容物を蓋の無いシャーレみたいな容器に移す。そうすると、付属のパウチに入ってるタレとカラシが無駄になる気がして、こちらも絞り出す。
となればもう、必然的に「混ぜ合わせなきゃ」という義務感が湧いて来て、マイ箸を取り出して熱心にかき混ぜた。
結果として入国審査のブースにニオイが充満し、オバチャンは「Oh!No!」と叫んで何かボタンを押した。
バタバタと駆けよって来る警備員。奪い去られるマイ・ソウルフード。
納豆食うの? 入国審査だった。
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