第6話 怪しい集会

 知り合いに、ちょっと新興宗教とかにはまりやすい女性がいる。その彼女が「集会があるから来てくれ」と誘ってきたのだが、あまりに様子がおかしい。

 これは流石に放っておけないと感じ、一緒に行くことに。


 彼女の案内で着いたところは、地下へ続く階段。天然の洞窟か人が掘ったものなのか、奥は広い講堂のような空間になっていた。

 壇上では一人の恰幅の良い中年の男が、創世記の内容らしい話を語っていた。地下の空間なので、声が遠くまで響く。


 誘ってきた彼女はどんどん奥に進んでしまい、見失わないように追いかける。すると、周囲からの低いうめき声によって、この集会の異様さに気づく。

 壇上の講演を聞く聴衆は皆、なぜか全裸で、鎖の着いた拘束具でパイプ椅子に縛り付けられていた。苦しい姿勢なのか、苦悶の表情を浮かべながら。

 しかし、美女ならともかく野郎やオバサンばかりなので、出来れば視界に入れたくない。そのせいで彼女を見失ってしまった。


 なるべく裸体を見ないようにしてあたりを見回す。すると、背後からひときわ大きなうめきが聞こえた。振り返ると……。

 パイプ椅子の上に拘束具と鎖だけが載っていた。まるで体だけが消えたように。

 やがて、あちこちからうめき声が上がり、そのたびに振り向くと人が消えている。


 気が付くと、地下の講堂には誰もいなくなっていた。壇上の講演者も含めて。

 どこからか職員らしい人たちが現れて、パイプ椅子を畳んで片づけを始めた。

 すると、同じようにどこからともなく、誘ってきた彼女が現れた。

「素晴らしい集会だったでしょ?」

 そう言うと地下講堂を出て、階段を上って行く。

 一体、何が起こったのかさっぱりわからないまま、その後を追う。

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