第12話 朝食にて

 朝になり、身の回りの世話をするためにウォルターが顔を出す。

 別にいいと断るのだが、今回の旅は従者が彼だけなので、言っても聞かないのだ。

 着替えを手伝ってくれたり、水を持ってきてくれたりと至れり尽くせりだ。

 昨夜もマイセンの動向を見張っていたはずなので、疲れているはずなのに申し訳ないとレヴィンは思った。


 そしてレヴィンの部屋には、朝食の準備ができたと伝えるために使用人が来ていた。

 了承の返事をし、使用人の後について食事の部屋へと向かう。

 部屋には既にドルトムット夫妻以外のメンバーが顔をそろえていた。

 といっても席に着いているのは、マイセンとフレンダ、ルビーの三人だけだが。

 フレンダの後ろにはオレリアが控えている。


 少し待つと、ドルトムット夫妻が部屋に入ってきて席に着いた。

 そして朝食が運ばれてくる。朝はプレートに様々な料理が盛られている。

 皆が食べ始めて少し経った頃、レヴィンは話を切り出した。


「そう言えば、ドルトムット卿」


「うん? なんだね?」


「視察ですが、明日で切り上げて王都に戻ろうと思います」


「そうか……。ろくに案内してあげられず申し訳ない。身内の不幸にも巻き込んでしまったしな」


「いえ、お気になさらず。それで、帰る時、一緒にフレンダ嬢を連れていきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか?」


 その言葉にこの場にいる全員が反応する。

 ドルトムット夫妻は、喜びを全面に表している。

 マイセンは、驚き戸惑っているようだ。彼の立場ならば喜んでもよいはずなのに困惑しているのは、つまりそう言う事なのだろう。

 フレンダも驚いているらしく、少し取り乱している。この場で宣言されるとは思ってもみなかったのだろう。

 オレリアは満足気な顔をしている。

 ルビーはあまり表情に出なくて解りにくいが、少し悲しそうな顔をしている。


「それは良い。フレンダの事はお頼み申し上げる」


「ありがとうございます」


 ここでマイセンがレヴィンに物申す。


「ナミディア卿、フレンダなど連れて行っては、不幸が移りますよ? 考え直された方が良いのでは?」


「いえ、もうフレンダさんにも話してありますし、私は迷信など信じておりません故」


「魔女を妻にするなど、お家を滅ぼすおつもりですか?」


「まだ、妻にするとは言っていませんが……まぁ迷信に過ぎないと言う証明にはなりそうですね。そうそう、まだ視察する事はたくさんあります。今日はマイセン殿もご一緒にいかがですか?」


「わ、私ですか? 有り難い申し出ですが、今日は予定がありますので……」


「そうですか。それは残念です」


 その後は、ポツポツと雑談をしながら食事を終える。

 席を立って自室に戻る途中でレヴィンは、ウォルターに告げる。


「マイセンの方は頼んだぞ」


「御意」


 ウォルターは少し頭を下げながらそう言った。


―――――――――――――――――――――――――――

今回は短いです。

すみません。

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