第36話 後日談
死霊術士のフェリクスとその仲間である、オットマーを捕えたデボラ達は、その旨を王都インビックに報告した。
王都からの沙汰をただ待っている訳にも行かない。
デボラと騎士団を中心に、アンデッドの討伐と民間人の捜索が連日行われていた。
お陰で、討伐もつつがなく進み、少ないながらも生存者も助け出されていた。
フェリクスとオットマーは、城塞内の独房に入れられ、連日、尋問が行われた。
フェリクスは『
一方のオットマーは少しずつではあるが、供述を始めていた。
自分がヴァール帝國の暗部『毒蝮』の命令を受け、動いていた事。
インペリア王国には一年前から潜伏し、冒険者として活動していた事。
計画の最終段階まで到達したため、間もなくヴァール帝國軍が侵攻してくるであろう事。
ちなみに、仲間だったオレールは本当の仲間ではなかったらしく、一年前に王都インビックでパーティを組んだだけの関係であった事が明らかにされた。
ただ、何もしゃべらないフェリクスや、オットマーの事を詳しく聞き出すべく、未だ拘束されて尋問される毎日を送っていた。
残党討伐も目途が立ったため、レヴィンとダライアス、ダダックはアウステリア王国へと帰還する事となった。最大時で八組いたアウステリア王国の冒険者であったがそのほとんどが死亡した事になる。人的被害は甚大であった。
冒険者の派遣要請を行ったインペリア王国が、支払うツケは大きいものとなった。
アウステリア王国に対しても、冒険者ギルドに対しても大きな補償をする事になり、インペリア王国は疲弊する事となる。
レヴィンは黒髪の女性、デボラを誼を通じる事にして、連絡先を教え合った。
ダライアスもシャルロットとある程度仲良くなったらしく、別れるのが名残惜しそうだ。彼の顔はデレデレで、こんな顔見たくなかったとレヴィンに思わせるものだった。
レヴィンが助けた少女、クロエは、王都インビックの孤児院に送られるはずであったが、本人の強い希望により、レヴィンが預かる事となった。のちに彼女は王都ヴィエナでグレンとリリナと養子縁組し、正式にレヴィンの義妹となる事になる。
インペリア王国は、鑑定士や取調官など兵1000を送り、帝國に備えたが、この時、既にレムレース北のリットナムまで進軍してきている情報を掴むことはできなかった。レヴィン達がレムレースを発って八日後、事件は起きた。
派遣されてきた鑑定士と取調官、そしてレムレースの武官によりフェリクスの取り調べが行われていた。
「おい、いい加減に吐いたらどうだ?」
「……」
黙ったままのフェリクスを黄金の光が包む。
「ふむ。フェリクス、男、35歳。加護は『背水夜叉』、職業は『
「この
「……」
「帝國に義理立てして良い事があるのか? お前など末端に過ぎない。切り捨てられただけとは思わんのか?」
「……」
その時、取り調べ室の扉が乱暴に開けられる。
「た、たいへんですッ!」
「落ち着けッ! ここは取調室だぞッ!」
「帝國が……帝國が、侵攻してきましたッ!」
「なッ!?」
それを聞いた、フェリクスは立ち上がると言った。
「確かに、俺は幼い頃から帝國に厳しい教育されてきた身……あんなところに戻ってもしょうがないかも知れんな」
「き、急に何をッ!?」
ここでフェリクスは『不死化』の能力を発動した。
天とその脳がつながる。
天から、惜しげもなく膨大な知識と技術が堕ちてくる。
フェリクスの脳が叡智に染まった。
フェリクスは、手足の縛めを訳もなく外すと、目の前の男の首を掴む。
その男はみるみるうちに、ミイラのように生気を抜かれて干からびてしまった。
脇に控えていた武官の胸を右手で刺し貫くと、取調室から出る。
そこには衛兵が十人ほどいた。
「
ボツリとつぶやくと、5mほどの火の球が部屋の中に降り注いだ。
部屋の中が地獄に変わる。存在していた者は消し炭になってしまった。
自分もまきこまれているが、魔力障壁があるためダメージはない。
「手加減してこれか……。俺は大いなる力を手に入れたぞッ!」
湧き上がる力と叡智に歓喜の声を上げながら、部屋から、城塞から、そしてレムレースから出て行くフェリクス。
偉大なる不死の王が誕生した瞬間であった。
その後、レムレースの街は大混乱に陥った。
レムレースの兵力2000と王都からの兵1000で破損した城塞に立てこもるも、防御機能が削がれてしまった要塞は役に立たなかった。
帝國兵が城塞になだれ込み、多くの者が討死した。
その中には、バルリエ将軍、マヌヴォー、騎士団長サジュマンの名前もあった。
かくして、レムレースの動乱は幕を降ろしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます