第8話 狩り
今回の戦闘で得た教訓からレヴィンはアイテムに頼るのではなく白魔法を覚える事にした。白魔導士に職業変更すると、早速、
ここら辺の低級魔法は図書館にある魔導書に載っていたので簡単に覚える事ができた。
もちろん、
しっかり
さらに黒魔導士に再変更すると、ちゃんと覚えた白魔法は表示されないようにもなっていた。有能な神様である。
そんなこんなで季節は巡り、十二月の年末を迎えていた。
レヴィンは中学校受験について学校の先生に相談した。
試験は二月にあり、筆記試験と、実技試験があるようであった。
レヴィンが進むのは魔法専門の方である。三年間の成績から見ても受験に失敗するような事はないだろうと言われた。
しかし、一応試験勉強は必要だろう。この面倒な作業を省きたいレヴィンは推薦入学はできないかも先生に尋ねていた。
早く魔物を倒してレベルアップしたいのである。
ちなみに、魔法の空撃ちも日課にしている。これは
早く強くなれば、できる事も広がる。可能性は無限大であった。
結論を言うと、推薦入学は面接だけなので成績の良かったレヴィンならば可能だろうとの事であった。
彼は推薦入試の願書を提出し、一月中旬にある面接を待つだけとなった。
あと、十二月と言えば、アリシアの誕生日があった。
レヴィンはネックレスをプレゼントした。安物であったが彼女はすごい喜んでいた。安物と言っても、一応、魔力を微増させる効果を持つマジックアイテムである。
南の精霊の森へもアリシアを伴っていくようになった。
彼女は補助魔法で主に攻守へのサポート役をこなしている。
付与術士の本分であるからグレンやレヴィンの役に立ててアリシアは嬉しそうにしている。
そしてとうとう十二月三十日を迎えた。
年末のパーティを豪華にするために肉を狩りに出かける事になった。
今日はアントニーも非番なので一緒だ。
これで今日の狩りは壁役も増え、安全面が大きく改善されるだろう。
「今日は、たくさん得物が獲れるといいなぁ」
雪がうっすらと積もった森へ入ると、開口一番そう言ったのはアントニーであった。せっかくの年末年始だ。ごちそうを食べて豪華にいきたいと思うのは皆同じであった。
「そうだな。今日はお前もいるし、たくさん狩りたいな」
グレンはそう言うと、足場を確認している。
「冬場と言えばデシディアかホワイトディアだな。ホワイトスネイクでもいいな」
デシディアとホワイトディアは鹿のような獣、ホワイトスネイクは爬虫類なのに冬でも活動する白い蛇である。
なお、三者とも獣なので魔石は持っていない。魔石を持っているのは魔物だけだ。
しばらく歩くとアントニーが魔物の足跡を発見した。
「この足跡はアルバレプスだな」
アルバレプスは兎のような獣である。素材として角と皮が獲れる。
足跡を追ってレヴィン達は進む。先頭はアントニーである。
「こういう時、狩人がいると楽なんだがなぁ……。リリナも連れて来れればよかったのにな」
リリナは身重だ。無理はさせられない。
足跡を追いしばらく行くと、グレンが木の根元辺りに佇む一匹のアルバレプスを発見した。体長が60cm位で冬以外の季節は茶色をしているが、冬になると体毛が真っ白になる。その個体も言うに漏れず雪の色に擬態していた。よく発見できたものだとレヴィンは感心する。
「魔法で仕留めるよ」
レヴィンが後ろから声をかける。
「
魔法を放つと、真っ白な雪の上に鮮血が飛び散った。
四人はすばやく近寄るとアルバレプスを回収し、両脚を縛ると血抜きするために樹の枝に吊るした。
「じゃあ、お前らはここに居ろ。俺達はここに得物を追い込む」
グレンがそう言って
しばらく待っているが、中々得物はやって来ない。
歩いているとそうでもなかったがじっとしているレヴィンとアリシアは段々寒くなり、じっとしていられなくなってくる。
隣りを見ると、冷たくなった手にアリシアは「ハァ」っと息を吐きかけている。
しかし、つま先の冷えばかりはどうにもならないのか、足踏みのような動きをしている。
どれ位たっただろうか?不意に数m先の低木の茂みから何かが飛び出してきた。
すぐに目は追いつかない。
慌てて目線を移すとホワイトディアであった。
すぐさま魔法を放つレヴィン。
「
その魔法も先程と同様にホワイトディアの首を掻き切った。
再び血潮がほとばしる。
やはり狩りには、切り取る系の魔法がいいなとレヴィンは思う。火や雷系ではどうしても肉に熱が入ってしまう。
生肉のまま血抜きもできるので便利な魔法である。大きな音もしないし。
得物を追い込んできたアントニーがこと切れたホワイトディアを引きずってこちらに来る。そしてまたまた先程と同様に両脚を縛ると、少し太い枝に得物を吊るす。
それが終わるとアントニーは再び森の奥へと去って行った。
何度隣りでアリシアが手の平に息を吐きかけたであろうか?
レヴィンはなんとか彼女を温めてやる方法がないかと考えていた。
魔法は魔法陣を描かないと発動しない。なんとか少しの火だけを制御できないだろうかと考えながら色々イメージしてみる。
魔法陣なしで火を操る方法など学校では習っていない。
レヴィンは前世で読んだ漫画にあったオーラという概念について考えていた。
体内から練りだすように練りだすようにとイメージして手から火がライターのように灯る光景を思い浮かべた。
目をつぶって何度も何度もそれを繰り返してみた。
しばらくそうしていると、隣りで「あッ!」と言う声が聞こえた。
レヴィンが目を開くと手の平にはライターの火のような小さな炎が揺らめいていた。
アリシアが手の平をその炎に近づける。
「あったか~い」
お前は自動販売機かと心の中でツッコミつつ、この無謀かとも思われた試みが成功した事にレヴィンは驚きを隠せないでいた。
他人が同じようにする事は可能であろうかと自問する。
学校で習わないだけで貴族や神殿が秘匿しているであろう技術の中にはそれも含まれているかも知れない。
これは秘密だし、まだまだ検証が必要だなとレヴィンは心に刻み込んだ。
そしてたき火を起こすべく行動に移した。
この時期だし、雪がうっすらと積もっているのだから乾いた木はまずないだろう。
レヴィンは何本もの細い枝と見つけ、先程のイメージで再び手から少し大きめの炎を出して枝を乾かしだした。
しばらく作業を続けて枝が乾いた事を確認すると、次にその枝を組んだ後、ローブのポケットの中にたまっていた小さな埃の塊を取り出すと種火を作り出す。
そして小さな枝から火を移し大きな炎に変えていった。
「すご~い」
アリシアが隣りで驚いている。
無事に炎が大きくなり暖を取れるまでになった。
二人はその炎にあたりながら、グレン達が得物を追い込んでくるのを待つ事にした。
その後、ホワイトディアとデシディアを追い込んで魔法で仕留めた。
また、グレンはホワイトスネイクを銃で仕留めて持ってきた。
結果、持ち帰るのが大変になるほどの得物を狩る事ができた。
それらは全て血抜きの後、皮を剥いで肉を切り分けバッグに入れて持ち帰る事にした。火を起こしていたので、せっかくだから肝臓などその他、肉のいくばくかを焼いて食べた。長時間、得物を追っていた二人と、じっとしていただけの二人であったが四人とも同様に腹を空かせていた事に違いはなかった。
冬の森での簡易焼肉はそれはもう格別な美味しさであった。
四人は大量の得物をゲットし、帰路についたのであった。
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