六月は最後に

朶骸なくす

そばにいても

冷たい四肢に雨が降る

閉じない目玉に雨水が垂れると涙のようであった

濡れゆく服は色を変え、重さを変え

血を流し、死さえ薄くした

突然の雨の中、動かぬ事態に怒りが湧いて

理不尽であると言いながら

己がこのような目に遭うことが理不尽であると思う

声は出るのに嗚咽しか出ず

テレビで観たような悲鳴が出せない

私は四肢を抱きしめ俯いているから

泣くことさえも面倒であった

頭から何が消えていくのが分かり

周りの喧騒が遠い

引っ張られる腕も

声も

いつのまにか消えていた

そのまま時が経つと

私はどこか遠い場所にいた

椅子に座っていた

泣き声とすすり泣きと色々と喧騒で嫌になり外へ出た

泣くことはなかったし、事実なのだから仕方がない

と、蓋をした

恐怖だけが残り、演目は日常と名づけ

機械のように笑っていたら涙が出た

きっとあの時の雨粒なのだろう

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