二者択一なので婚約破棄のために同盟に入りました!!
館花藤耶
転生先でも浮気!?婚約者は実姉と浮気中。
婚約者の裏切り。白昼からの浮気現場に遭遇!!
今日は、ラグラバルト王国の王太子「ラグラバルトの至宝」と呼ばれる頭脳明晰、王妃に似た美術品のような美しさを併せ持つ完璧王子と名高いカイル殿下と、「ラグラバルトの真珠」と称される、美姫アデレイドの婚約披露パーティが行われる予定になっている。
私、エメリア=グラディウスは 静かな王宮の左翼にある執務室にて、算術盤を弾いていた。アデレ
イドは、グラディウス伯爵家の長女で
そんな重要な日に、私は国庫予算の試算について意見を聞きたいとカイル殿下に早朝から王宮にお呼び出しがかかった。
「カイル様・・。こちらの計算式の解が大幅に間違っていましたので、訂正しました。お手すきの時にご確認下さいね?」
「確かに訂正箇所が多いな・・。この試算担当の者は、二度確認を怠ったのだろうな。すぐに目を通すよ」
朝からの登宮は気が重かったが、家でドレスやアクセサリーを身につけさせられ、着せ替えパンダにされるより、執務室での計算のお仕事の方がまだマシだった。
赤く染まった頬は楽し気に、大好きな計算式を紙にスラスラと書き写していた。
カイル殿下、宰相の息子エリオスと共に黙々と政策に必要な資金繰りの試算を出す作業をしていた。
お昼休憩の最中のこと。
いつものように書類の山で溢れた執務机の上に昼食を並べ、食べながらの作業をしていると、書類に目を通していた私にカイルから「気分転換に散歩でも如何かな?」と提案された。
今夜の舞踏会の準備のために早めに王都にある屋敷に戻らなければならない私は、目の前の書類を片付けたかったのだが・・。断る理由もなかったので、カイルの提案に渋々頷いた。
そして、今は何故か・・。王宮の庭園の外れにあるガラス張りの温室の中にいた。
中は湿度が高く、軽く背中に汗をかいた状態の私は茂みの中に息を潜めている。
目映い日差しが差し込む広大な王宮の温室の中には、大きな白亜の大理石の噴水が備えられていた。ガラスの天井に虹色の光が噴水を照らしている。
ザァァァァッ・・・・。
このラグラバルト王国の創国母として讃えられている女神エメルディナが大樹に横たわった像が噴水の中央に位置していた。
その噴水の横に、大きな大理石で来たテーブルと長椅子が置かれている。
肩ぐらいの背丈の樹木が連なって植えられている並んだ植木鉢の隙間から、こっそりと視線を走らせ、長椅子に重なりあう影を捉えていた。
「・・ふっあ・・っ。あぁっ・・。あぁん・・。」
男女の甘い囁きと、切ない吐息が耳に入ってきていた。
その白い石の長椅子の座面には、豪奢な金色の髪が広がり、ドレスからはだけた白い肌が見える。
「・・大丈夫??愛しいアデル、痛くない??こんな場所で、ごめんね・・。
君の美しい白のドレス姿に目を奪われてしまって。・・もう、我慢など出来ない・・。」
私はその光景を唖然とした表情で見つめていた。
カイルとの婚約披露パーティに出席する予定の姉アデレイドと、自分の婚約者である王宮騎士であるノアが重なり合っていた。
目を疑うような光景に、「信じられない!!」と思う気持ちと・・。
「おい、またこの展開なの!?」と、怒りを通り越して呆れ果てて突っ込みを入れている両方の気持ちで頭の中が分断されていた。
「えーっと、殿下?・・あれは、何でしょうか?」
卓上での作業をしやすいように、簡素な水色のドレスを身に着けていた私は、ミルクティブラウンの髪を二つにまとめていた。
上向きにカールした長い睫毛がバサッと影を落としていた。零れ落ちそうな大きな翠が濃いアレキサンドライトの瞳を揺らし、隣で一緒に息を潜めているカイルに小首を傾げながら尋ねた。
「何だと聞かれてもな。見たままだと思うが・・。」
私の隣に並ぶカイル殿下が、秀麗な美術品のようなプラチナブロンドの髪を気だるげに書き上げた。大きな緑がかったロンドンブルーサファイアのような深い碧瞳をそのままに淡々と答えた。
「見たまま・・ですか。成程・・男女がまぐわっている現場で宜しいか?」
「「宜しいか?」と、聞かれても返答に困るな。ご令嬢がまぐわうなんて表現をするのはどうなんだろうか・・。酷く品性に欠けてはいないか?」
目の前で重なり合っているのは、私の婚約者で騎士団所属の侯爵家嫡男ノア=ライトゴールド。
そして、彼の下敷きになって先ほどから甘い声を上げている女性は・・。
私の姉でお隣にいるカイルの婚約者であるアデレイド=グラジウス伯爵令嬢だった。
「いいえ!品性に欠けているのは、太陽が頂点にある白昼に逢引きした上に、硬い石の上で貪りあっているお二人の方でしょう!?お姉様とノア様の品格の方が問題大有りだと思いますけど!?婚約披露パーティの準備に先に王宮にいらしていることは知っておりましたが、殿下の住まう王宮で他の男性と事に及ぶって・・。ノアもノアですけど、お二人の神経を疑いますわ!!」
「・・しいっ!!先ほどからカイル様も、エメリア様も声が大きいですよ。
お二人に気づかれてしまいますよ!」
私とカイルはエリオスの鋭い突っ込みに、ハッと我に返った。
「・・ふっ、あんっ。ああぁん・・。」
「アデル・・。一回、いい・・??」
一回って何だよ!?その青の騎士服が泣くわよ!?
と、叫びたくなっていた。。
「・・はぁ。お姉さまもノアも、真っ昼間っからお盛んね。」
普通の令嬢だったら真っ赤になって卒倒してしまいそうな現場に居合わせた状況であるのに、表情を崩さずに呆れた声を上げた私にカイルもエリオスも驚いていた。
「いたく冷静だな。・・リアは、ショックではないのか??」
「えー・・?何がですか??」
「お前の婚約者のノアはアデレイドと深い仲のようだが・・。1年後に、ノアと結婚式を挙げる予定なのだろう?よりによって、お前の姉と浮気しているような男と結婚したくないだろう?」
「まぁ・・。嫌ですけど。それを言うなら、カイル様の方が問題でしょう?この国の国母となる予定のお姉さまが、結婚前に他の男性とまぐわっているなんて、一大事じゃないですか!?」
「・・だから、まぐわう言うな・・。
我がラグラバルトの後継ぎになる子どもが、もし別の男との間の子どもかもしれないなど、到底許せることではないな。
だが、この婚約は「イムディーナの誓い」によるものだからな・・。法に則った誓約だ。破棄するには王立審議会の審判にかけなければならないだろうな」
「審判にかけるとなると・・。ノア様やアデレイド様、そのご親族は、わが国の法に則り社会的に抹殺される事になりますが・・。」
今日の空のような晴れやかな水色の瞳を向けて来る、真顔のエリオスの言葉の爆弾が私にとって酷なんですけど・・。
「抹殺ですか・・!?姉の肉欲の暴走に、私や家族も道ずれにされるんですか?!とばっちりじゃないですかーーー!?」
「まぁ、王宮審判にかけたらそうなるだけだ・・。醜聞となってしまうから、それは避けたいがな。リア、落ち着けよ」
頭を抱えたまま蹲った私の頭をカイルがポンポンと撫でた。
・・・カイルはいつも私を子ども扱いする。
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