デスgoゲームが終わらない~死んだ後から魂をかけたデスゲームが始まる~

田圃獅子迦

第1話 詰んだ

  佐藤信之ことノブは、この異世界へ来てはや、一週間は経つが未だにレベル1のままだった。


「あーくそー、異世界へ転移するとき鑑定とか全属性魔法とか身体能力強化とかチートを神様から貰うよな。」


(異世界転生したけどチートスキル?そんなものは一切ない、神様は出て来ないし神様紛いの人?に強制的にここへ転移させられるしロクなことがない。

 まあ、百歩譲ってチートなしは良いとしてレベル1から上がらないってどう言うこと? 最弱のゴブリンやスライムにだって苦戦するレベル。こんなの無理ゲーじゃん)


ノブはそう思いながら冒険者ギルドから受けた日課である薬草の採取をしていた。


「ん?あれはなんだ?」


  ある程度、薬草を抜き終えたノブは切り立った壁に黒い隙間があることに気が付いた。何か有るかもしれないから見てみようと近づき中を覗いてみる。すると何か光るものがあり手を突っ込んでみることにした。


「 うぉー、なにかに引っ張られるぞ。」


 ノブは穴の中へグイグイと引き込まれる。穴の中は 体一つ分が入るかはいらないかであるがどんどん奥へと引き込まれる。途中、 ピンボールのように岩に当たりながら何かに引っ張られる。引っ張られる力が無くなるころには、穴から出ていた。


「うー、痛てててここは何処だ ?」


 ノブはここが何処なのか辺りを見渡した。左側には木が広がっている森ではあり所々に雪が積もっていた。右側には海の砂浜が広がっている。 背後は壁になっており戻れそうな場所もない。ノブが薬草を抜いていた景色とは全く違っていた。


「これはマジでヤバイ」


 ノブは直ぐに詰んだことに気が付いた。それは強いモンスターが配置されている場合に初級プレーヤーが入れないように崖や山を設置し隔離されているがその設置が雑だったりした場合、 稀に継ぎ目の部分を通り抜けできてしまったりする。

ゲームで後半に行くフィールドで遭遇する雑魚モンスターでもかなり強い、そのフィールドにレベル1のノブがいる。もし、モンスターに遭遇したらワンパンで死ぬ。そして街の近所で薬草を抜いていたので食料もない。ノブはこれは詰んだとしか思えなかった。


「右に行くか左に行くかどうしよう ?究極の二択だ。」


 ノブは悩みに悩んだ末、海岸沿いに進むことにした。海岸なら見晴らしが良い分に遠くからでも発見し、早く逃げることができる。

 こうして海岸沿いを警戒しながら歩くこと一時間、ノブはラッキーなことにモンスターに遭遇してない。

すると草むらからガサガサと音がして何か出てきた。ノブは恐々と音がする方に身体を向けた。なんと、スライムが現れた。


「 なんだ、スライムかよ。脅かすなよ」


 しかし、ノブは良く見るといつもの水色ではないことに気付いた。スライムはネズミ色をしている。


「なんだじゃねーよ。スライムはスライムでもこれはメタルスライムだー!!」


 ノブは急いで逃げる。ノブの前に現れたのはメタルスライムで全身が金属だ。メタルスライムは全身金属なので防御力があるのは想像つくと思うが攻撃力も予想外にある。生身の人間が金属バットに殴られたらどうだろう、レベル1のノブではワンパンで死ぬ。

 ノブはかれこれ15分は全力で走った。ノブはもともと体力がないからすぐにへばってしまった。全力で走ったことでなんとかメタルスライムからは逃れることには成功した。それからノブは海岸で脇腹を抑えゼエゼエ言いながらその場に座って体力の回復を待った。

 

 体力が回復し、少し歩いていると警官姿の男に出会う。


「おい、お前。私は、運営の者だがここは、冒険禁止地区だぞ。わかっているのか?」


「すみません、ここへはどうやって来たのかわからないんです。始まりの街にいたのですが、気が付けばここに居ました。」


「嘘を付くな。ここは厳重な警備で守られている筈だ。どうやって入ってきた?」


「だから、わからないんです。」


 (いきなり職質してくると言うことは、ここはヤバイところなんだろう。)


「おい、何か隠しているだろう。身柄を拘束するぞ。」


(これ、捕まったらヤバイパターンだ、奴しかいないな逃げるぞ。)


 男1人だと認識したノブは、逃げることにした。


「こら、待て‼︎ 」


 警官は、ノブを走って追いかけ懐から笛を取り出して吹いた。すると笛の音を聞き付けた岡っ引きの仲間であろう者達が、1人また1人と増え総勢10人となった。

 ノブは、逃げるが15分後には、警官達に囲まれてしまった。


「さあ逃げられないぞ。」


(もうダメかも。)


 ノブは、観念してその場に座り込んでしまう。


「お前たち、弱い者イジメするのは辞めない。」


 どう見てもNPC街娘がそこには立っていた。街娘と違いがあるとすれば、髪の色がピンクや青色ではなく黄緑色である事だ。


「お、お前は指名手配者のミラだな? 大人しく捕まるんだ。」


「嫌だといったらどうするのかしら?」


「実力行使するまでよ。」


警官達はミラと呼ばれる街娘に襲いかかった。


「しょうがないわね。スターオリオンパワーメイクアップ」


 ミラと呼ばれる街娘は、どこかからかBGMが流れて布のような物がクルクルと巻き付きあっという間に姿が変わった。どこかの美少女戦士のような姿をしており手には大きい宝石の付いたメイスを持っている。ミラが変身している最中、警官達は襲うのを一旦中止していたが変身し終えると再び襲いだす。

 警官の攻撃はミラには当らず、逆にミラの攻撃によって1人また1人、警官は倒されていく。ものの5分もしない内に全員が倒されるのであった。警官達は、H Pが無くなると光の粒子となり拡散され消えてしまった。


「アイツらは大したことないわね。ところで貴方は、弱そうだけど何処からこのエリアに入ってきたのかしら?」


「助けてくれてありがとう。俺は、ノブ。始まりの街の近くで薬草を取っていたんだけど壁の穴に手を突っ込んでみたら此処に来てしまったんだ。」


「そう、そこまで案内してくれる?」


「良いけど、途中に強いモンスターが居て倒されそうなんだ。」


「大丈夫よ、私が守ってあげるわ。」


「なら、よろしく頼むよ」


 ノブとミラは、ノブが出て来た壁に向かうのであった。

 ミラとノブは、ノブが出てきた穴の前へと着いた。途中、モンスターが出現するがミラの前ではモンスターはなす術もなく倒されていくのであった。

ノブは出てきた壁の前に行きミラに見えるように指を指した。


「信じられないかもしれないんだけどここにはここから俺は出てきたんだ。」


 ミラはノブの指で指した所を念入りにチェックしだした。


「ふん、ふん、なるほどね。ノブちょっとここに立ってくれない。」


「ああ、良いよ。ここ?」


「そう、正面が壁になるように立って尻を私に向けて欲しいの。」


「こうかな?」


「そうそのままジッとしてて。」


「スタープリズムキック」


 ミラは、ノブの尻を蹴り上げた。ノブは衝撃で壁へ頭から突っ込むが壁に激突せずに壁の中へ吸い込まれる。


「痛てーーーーーーー」


 ノブの声はどんどん小さくなっていき最後には聞こえなくなってしまった。それを見たミラはノブが消えていった所に向けジャンプした。


しばらくするとノブは、壁から出てきた。

受け身が取れずに顔面からダイブする。


「痛ってー。」


ノブはあまりの痛さに転げ回っている所にミラが出てきてノブの頭に乗るのであった。


「痛ってーよ。何すんだよ。」


「おっとごめんなさい。それよりも周りを見てここが何処だか分かる?」


ノブは辺りを見回すとそこは始まりの街付近

に戻っていることが分かった。


「ここは始まりの街付近だ」


「そう、どうやら逃げられたようね。あなた冒険者として弱そうね。何でまだレベル1なの?」


「実は」


ノブは、ミラに経緯を話すのであった。

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