悲しい世界線
@matushi
第1話
夢の中で大きな小便器に向かって止まらない尿をたしていた。またやってしまったか。大学3年生の桂清志は、冷たいパンツとほのかに香るアンモニア臭で改めて状況を把握した。これで人生で5度目くらいか。昨晩1人で飲んで酔っ払い、寝る前のトイレを忘れていたことに気づいた。とりあえずパンツとシーツを手洗いして、シャワーを浴び新しい服に着替えた。いつもは、夢の途中で永遠と続く尿に途中で気づいて大惨事を避けることができるが、昨晩はお酒が入ってたこともあり気づかなかった。さて大学に行ってくるか。桂清志は、何事もなかったかのように、3km離れたキャンパスへと向かった。大学に着くと、教室にはすでに友達の三船毅と澤田純がいた。「おはよう桂」三船が俺に気づいた。今日は、久しぶりにお漏らしをしたこともあって、できるだけ1人でいようと思っていた。しかし、1番前の席と三船の隣の席しか空いていなかった。1番前に座るのも嫌だなあとなんとなく思って、三船の隣に座った。三船と澤田の会話に相槌を打ちながらずっとお漏らしについて自問自答していた。「俺は現実世界でトイレをするのと同じ様に、夢の中でトイレをしただけだ」そういう風に自分に言い聞かせて、自尊心が傷つかないようにした。ここで一つ気になることがあった。俺は男だから夢の中で立ちションをするが、女の子の場合は夢の中でもちゃんと座ってトイレをするのだろうか。そうだとしたら座るまでの時間に気づけるから有利だよなあ...なんてことを考えてたら教授が教室に入ってきて授業が始まった。授業中も女の子のトイレの夢が頭から離れず、「女の子 トイレ 夢」でググってみた。すると以下のような知恵袋にたどり着いた。
21歳、女、学生です。
開放的なトイレで用を足さなければならない、という夢をよく見ます。
夢の中でトイレに行くのですが、仕切りやドアが無かったり、大部屋に便器だけが沢山あるなど周りから丸見えのトイレしか出てきません。周りには男女関係なく人が沢山います。
結局私は「恥ずかしくて出来ない」といって用を足すのを諦めています。
一読した後に、俺に足りないのは、羞恥心だったことに気づかされた。そんなことを考えてるうちに、教授の宮崎敏郎がみんなに問題を出してきた。日本にピアノ調律師は何人いるか?という問いだった。ん?ちょっと待てよ 俺この話昨日夢でトイレする前に本で読んだぞ 確かフェルミ推定とやらで推定できて5が四つ並んでた気がする。でもここで変に目立つと恥ずかしかったから、知らないふりをしていた。桂は「今の俺に足りないのは羞恥心だ」と自分に言い聞かせていた。そんな時「桂これわかるか?」と三船が聞いてきたため、ちょっと授業聞いてなかったからわからんと言った。すると澤田が「桂、今日やる気ないな」と言った。桂は澤田にそう言われて初めて気づいた。人生5度目のお漏らしをしたことで、いつもと違う自分になっていることに。ちょっと、気分転換するために俺は、教室の後ろのドアから出て、トイレに向かった。そこには夢で見たトイレよりスタイリュッシュな小便器があった。
なんで夢で出てくる小便器は、デカい桶みたいな感じなのか。そんなことを考えていると、隣に澤田がやってきた。澤田が「なんか今日変だけど大丈夫か」と心配してきてくれた。大丈夫だよとだけ答えて、先に教室に戻った。教室に戻ると、さっきの問題は終わっていた。黒板に書かれた答えと、夢で見た数字は一緒だった。まあたまたまだよな、と桂は自分に言い聞かせた。
大学から戻ってきた桂はいつものように、一人暮らしの寂しさを紛らわすため、テレビをつけた。もう17時か。今日の晩ご飯は、なんにしようかなと桂は考えていた。なんとなく外食の気分だったが、ラーメンか牛丼かで迷ってる時に、あるニュースが流れてきた。アナウンサー「たった今入ってきたニュースです。今日午後4時ごろ、丸岡市西区の住宅街で長野さん宅に住む長男(10)と、次男(8)が何者かによって殺害された模様です。」
丸岡市西区といえば、俺が小学生の頃に住んでたところか。あんまり物騒なイメージはなかったけど、これはかわいそうだな。なんてことを思いながら、腹が減ったのもあって外に出た。もう5月の中旬で日中はあったかくなってきたが、夜は心地いい程度に気持ちよかった。「もう少しで暖かい匂いが聴こえてきそうだな」と、桂はわけのわからんことを口にしていた。桂が住んでる牛亀県は、豚骨ラーメンが有名で、夜もラーメンを食べる人が多い。ちょうど桂の家の近くに、バリウマラーメンと、牛丼チェーン店があるため、よくそこでご飯を食べている。今日は、バリウマラーメンでも食べて元気取り戻すかと言って、桂はバリウマラーメンに入っていった。食券機でバリウマラーメン380円と替え玉100円を買って、バリカタでお願いしますと店員に渡した。ラーメンを待っている間、カウンターの奥にあるテレビを見ていた。すると、さっき家で見たニュースがまた流れていた。アナウンサー「今日午後4時ごろ丸岡市西区で...」小さい子どもが2人もなくなっているし、しばらくはこのニュースが続きそうだな。そう考えていると、オマチドウと、いつものラーメンがきた。やっぱり豚骨ラーメンはうまいなあと思いながら食べてたら、すぐに麺がなくなり、替え玉を固めで注文した。はじめは、替え玉も同じかたさで食べていたが、最近は、替え玉で一つ固さを下げるのが性に合っている。お客さん替え玉置いとくねー。替え玉を食べほすと、桂は店を出た。ちょっとここで一服するかと思い、外のベンチに座って、たばこに火をつけた。ラーメンを食べてる時の水もうまいけど、ラーメンを完食した後のタバコもうまいんだよななんて思いながら、たばこを吸ってると、よく通ってる近くのバーのマスターが「おう、桂お前も今日はラーメンか」と声をかけてきた。どうやらマスターも今日は仕事前にラーメンを食べにきたらしい。「今日お店は暇そうだけど、くるか?」とマスターが言った。昨日は酒飲んでちょっとやらかしたけど、やっぱり酒が好きな性分は変わらなく、行きますと返事をした。マスターが「店、開けてるから中で待っといて」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます