第46話〜従魔契約
トモは石像のように固まっていた。
なまじっか感情を取り戻してしまったのがいけなかった。
かつてのままだったならば理解出来ない物事に直面しても淡々と対処できていただろう。
しかし感情があるということは、それだけ思考に影響を与えるということであり、さらに取り戻したばかりの感情に振り回された結果、トモはフリーズした。
そしてトモは生まれて初めて現実逃避をした。
厳密には再び毛布をかぶって目を瞑った。
問題の先送り、である。
「高位の魔獣や神獣は人の姿をとることが出来ると聞いたことがあるわ。ユキちゃんもそのどちらかだったみたいね。獣人なんかは逆にレベルが上がることで【先祖返り】のスキルを得て獣化することができるようになるらしいけど」
昼である。
マゼンダである。
朝はとにかく大変だった、とだけ言っておこう。
とりあえず朝になってやってきたマゼンダの誤解を解く作業に二時間ほどかかった。
現在ユキはマゼンダがどこからか引っ張り出してきた女児用のモコモコした服を着ている。
光沢のある真っ白な髪にボンボンのついた白い服は、ユキの可憐な容姿と相まって天使のようだ。
将来は守ってあげたくなるような美人になるわぁ、とはマゼンダ談。
「ユキちゃんはスノウウルフの子供だと思ってたんだけど、違ったのねぇ」
スノウウルフは街の外の白亜の森の比較的浅い場所に出没する魔獣。
その名の通り雪と同化する真っ白な毛皮と最大で2メートルほどの大きさまで成長するC級の魔獣だ。
マゼンダはユキをトモがテイムした、モンスターの子供だと思っていたらしい。
それにしてもなぜユキは人化できるようになったのだろう。
「う~ん、もしかしたら従魔契約かしら?契約したモンスターは主人のレベルが上がれば比例して強くなると言われているし」
正確には主人と共にモンスターを倒すなどの経験を経ることで、手に入る経験値の一部が従魔にも入るため強くなる。
もっともパーティー契約のように経験値を等分するのではなく、ほんの一割か二割程度らしいが。
それでも確かにトモは前日大幅なレベルアップを経験した。
これまでほとんどレベルを上げる機会のなかったトモが、身体の変化に耐えられないほど急激なレベルアップ。
その数割程度でも、まだ子供のユキには大幅なレベルアップに繋がったことだろう。
それにしてもトモはユキと従魔契約をした覚えはない。
契約には色々な条件があったはずだが。
「モンスターとの相性が良くて懐いた場合とか、圧倒的な実力差がある場合は、いつの間にかテイムしていることはあるわよ?まぁほとんどそんなことないんだけどね。それに本格的な契約には主人となる人の血がいるはずだし」
大抵の場合実力でモンスターを屈指させ、術式による契約で強制的に契約を交わすらしい。
もっとも互いに相性が良く、また心が通じ合っていれば、あとは主人が血を与えるだけで簡易な契約はできるらしい。
そういえば。
昨日包囲から脱する際に全身に軽度の傷を負った。
懐のユキに攻撃が当たらないように庇った傷もいくつかある。
その時にユキが傷口を舐めていたような…。
「……。」
どうやらユキとは従魔契約を交わしてしまっていたようだ。
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