緑の目
@kanon510
緑の目
時は二九四三年、第三次世界大戦を経て世界は不安定ながらも平和を保っていた。しかし、その平和はある人物によって崩れ去ることになる。
エラディック=ヴャイシュ。
少数民族「エラミラ」の生き残り。彼は単身でルロニア国を襲撃し、後に世界最狂のエネルギー体と呼ばれる「緑の目」を用いて国王を殺害、王都を制圧し、瞬く間にルロニア国を掌握。国名をクャザンギに変え、快楽殺人を行うため近隣諸国に侵攻し、国民を虐殺した。そんな最狂の人物、エラディック=ヴャイシュを止めるため各国同意のもと、ヴャイシュの暗殺が行われた。しかし、結果は失敗。「緑の目」は高密度のエネルギー体。そのエネルギー量は原子力をも凌ぐ。ヴャイシュは暗殺されることを予期し、自分の身体の周りに高密度なエネルギーのバリアを張っていた。結果、如何なる状況においても暗殺されない状態を作り上げていたのだ。もはや、ヴャイシュの暗殺は不可能。各国の代表達はそう思ってしまった。しかし、ヴャイシュの快楽殺人は止まらない。多くの人が彼の快楽殺人の被害者にさせられ、クャザンギが誕生してから僅か半年で、世界人口は七○○万人から、五○○万人まで激減した……。
クャザンギ誕生から一年後。ついに「緑の目」に対抗できるエネルギー体が開発される。その名も「ネザリア」。ネザミウムと劣化リアンを溶解、凝固させ、それを更に圧縮したもので、従来の原子力、リアンのおよそ十倍のエネルギーを保有する。この「ネザリア」が開発されたことによって、エラディック=ヴャイシュの持つ「緑の目」に対抗できる武器を各国は手に入れた。しかし、「ネザリア」を量産することは叶わなかった。その理由はネザミウムの希少性にある。「ネザミウム」 通称「溶岩湖の奇石」は、溶岩によって溶かされ固まった生物の心臓である。産出が確認されているのは、ヴァンド火山のみであり、その産出量も微々たるものである。質は同等でも量で劣っていれば軍事力には差がついてしまう。結果、「ネザリア」は「緑の目」の対抗策にはなったが、ヴャイシュの快楽殺人をゼロにすることはできなかった。
それから一年後、ヴャイシュの近隣諸国への侵攻は「ネザリア」が抑止力になったのか、かなり減少していた。各国がそんな状況に安堵したとき、世界が震えるような事件が起こる。
時は二九四五年、エラディック=ヴャイシュによる快楽殺人を経て世界は混沌を極めていた。そんな中、エラディック=ルルによってヴャイシュは殺害されることとなる。人々は喜び、今度こそ平和な世界が来ることを願った。世界に平和をもたらしたエラディック=ルルはヴャイシュとともに遺体として発見された。その際、ルルとヴャイシュの目が、抉り取られていたが、気にする者は誰一人としていなかった。こうして一人の男によって引き起こされた快楽殺人は一人の少女によって終わりを迎えた。
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「エラミラ」通称「緑の目」
エラディック川流域から産出されバラミヤの樹脂が固形化したものと表向きには言われているが、実際はその地に住む
少数民族「エラミラ」の瞳だということがわかったのは、
エラディック=ヴャイシュが殺害された十年後のことであった。
緑の目 @kanon510
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