お前に使うべきカードは、決まった
―なっ……今のは、まさか……―
「ああ、そうだ。【阻む暴風】……まだ在庫があったもんでな」
そう、阻む暴風。そのカードは「所有者への攻撃を物理・魔法問わずに魔法の風にて弾き飛ばす」と定められているが故に……山を消し飛ばすような炎であろうと、例外はない。
―ハ、ハハハハハハ! ならばもう1度消し飛ばすまで!―
そう、もう【阻む暴風】の在庫は無い。【マジックシールド】もない。だからこそ、次にあの着弾すれば、ヴォードもレイアも消し飛ばされるだろう。
だが……ヴォードの目は、確かな希望を見据えていた。
「いいや、残念だが……夜明けだ」
長い夜が明ける。ヴォード達を巻き込むためのファルグニールの仕掛けが、そしてヴォードの予想以上の足の遅さや劣った体力が、予想外の時間を使わせた。それ故に、今……夜が明け、太陽が昇る。朝が、やってきたのだ。
―……それがどうした。何の時間稼ぎだ?―
「こういうことだ……【ドロー】!」
そう、ファルグニールは知らない。ヴォード達が見せなかったからだ。教えなかったからだ。
ヴォードのカードは1日1回、「朝」に【ドロー】によって5枚補充されるということを。
そして……ヴォードの眼前に、5枚のカードが現れる。
1枚は銀、そして4枚は白。
結果としては、それはあまり良くはない。だが……望んでいた「銀1枚」が、そこに在った。
「そして……いくぞ、【ラストギャンブル!】」
―なっ……!―
そうして、ヴォードの中から残る全てのカードが光の奔流となって飛び出し天へと昇っていく。その光景に、何かの攻撃かとファルグニールは防御態勢に入り……しかし、それは攻撃ではない。
ファルグニールは、見た。自分を不敵な笑顔で指差す、そのちっぽけな人間の姿を。
ファルグニールは、聞いた。ちっぽけな人間の……その大きな宣言を。
「お前に使うべきカードは、決まった」
ヴォードの眼前で、5枚の虹色のカードが輝く。
鮮烈にして強大。荘厳にして痛烈なる輝きを放つ5枚のカードに、ファルグニールは本能的な恐怖を覚える。
分からない。分からないが……アレは、とてつもなく恐ろしいものだ。
「いくぞ、ファルグニール!」
―ヒッ……こ、この……死ねえええええええ!―
ファルグニールは、自分に生み出せる限りの巨大な炎の塊を顕現させ放つ。
この地域一帯全てを焼き尽くし溶かし尽くす程の炎。
それをヴォードを倒す為だけに解き放ち……しかし、それは放つと同時に何かに吸い込まれるように端から消えていく。
そう、それは……ヴォードの手の先に浮かぶ1枚の虹カードに吸い込まれていたのだ。
巨大すぎる炎の全てが、そのカードに吸い込まれ……そして、ヴォードは告げる。
「返すぞ、この炎」
―なっ……―
「弾き返せ……【リフレクションフィールド】!」
虹カードが光となって弾け、複雑な魔法陣の形へと変化する。そして、そこから放たれたのは……ファルグニールが放ったはずの炎の塊と同等の、強烈なファイアブレスの如き火炎放射だった。
―が、があああああああああああああああああ!―
無論、ファルグニールは……新ファルグニールともいえるこの姿になった時点で、完全に近い火耐性を得ている。たとえどれほど強力な炎であろうとその身体を焼くことなど出来ない。
出来ないが、自分の渾身の炎がこんな形で破られた事実は、その自信を根底から打ち砕くものだった。
―お、おのれおのれおのれええええ! そんな小細工が何度も通用すると思うかあ!―
ヴォードのカードが使い捨てであることは、ファルグニールも理解している。ならば、あのカードはもう効果を終了している。
ならば、次はもうない。そう判断してファルグニールは巨大な火の渦を放つが……それは、ヴォードに届く前にその全てが虚空に消え去るかのように消失していく。いや……消えているのではない。吸い込まれている。その事実に気付いた時、ファルグニールは「まさか」と呟き、ヴォードを見て戦慄する。
―……まさか。1回で終わりではないのかー
「ああ。お前には残念だろうが……そういうことだ」
そう、ヴォードの使用したカードはファルグニールの見抜いたとおりに使い捨てだ。それはどのカードでも基本的には変わらない。だが……使用は「1度」であっても効果は「1回」とは限らない。
・【虹】リフレクションフィールド……ありとあらゆる「攻撃」に分類される事象は5分の間、完全に吸収される。吸収した攻撃は「リフレクションフィールド」のワードで開放、同属性の放射系攻撃として放たれる。
「さあ、返すぞ……【リフレクションフィールド】!」
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