第10話 青山先輩は突然訪ねたい
あの後、凛と朝食を食べ、凛は無事家に帰った。まぁ、家となりなんだけどな。
俺も昨日はどっと疲れたので、先程からソファーに座り込んで天井を見つめている。
ふと、昨日の夜の夢を思い出した。
あの日何も言わず去っていった、青山先輩。
別に好きでもないのに、先輩のことを考えてしまう。
今は何処で何をしているのか、彼氏とか出来たのかな、とかね。
まぁ、俺の知ったことではないか‥‥‥。
「はぁ、今日は暇になったな」
俺はため息をつきながら、ソファーに身を委ねる。
いつも土日は凛と出かけるか家で過ごしていたものだから、今日と明日が急に暇になり、妙な違和感と寂しさを感じている。
うーん、読みたいラノベも観たいアニメも今はないしな‥‥‥リュウでも誘って遊びに行くか。
そう思い、俺はリュウに電話をかけると、ワンコールで出た。怖ぇなおい‥‥‥。
「はーい、みんなのアイドル神崎龍之介でっす! 」
ブチッと思わず電話を切ってしまった。
すると、すぐに折り返しでリュウからかかってきた。
「ねえ!? なんで切るの!? ひどない!?」
「いや、ウザ‥‥‥と思って」
「ガチトーンやめてっ!? 俺泣きたくなるから!」
「はぁ‥‥‥」
「かけてきたのそっちなのになんでため息‥‥‥? で、なんか用?」
「いやまぁ、暇だったから出かけようかと」
「えっ!? 健人からのお誘い初じゃね!? 嬉しいんだけど‥‥‥今アミちゃん隣にいるんよね。わりいけど、また今度」
「お前、ほんとアミちゃん好きなのな‥‥‥まぁいいや、また今度」
そう言って俺は電話を切った。
あの野郎、こういう時に限って女と遊んでやがるからな‥‥‥俺も人の事言えないか。
はぁ、何かいい事ねえかなあ。
そんな事を考えながら冷蔵庫にある缶コーヒーを開け、飲んでいると、突然、インターホンが鳴った。
土曜の昼前に一体誰だ? まさか凛か? と思って玄関に向かい、扉を開けた。
するとそこには、意外な人物が立っていた。
スラリと伸びた脚にデニムショートパンツ。
見覚えのある茶髪のボブカットに、化粧でより美しく光る瞳。唇のリップはぷるんっと音を立てそうなくらい艶がある。
この人は‥‥‥
「健人くん、ひっさしぶりー!」
そう言って突然抱きついてくるこの女性は、
「あ、青山‥‥‥先輩‥‥‥?」
俺は目の前の現実を受け入れられず、拍子抜けた声を出してしまった。
「うん、そーだよ? どしたの、そんな意外そうな顔して」
俺は状況が呑み込めず、呆けた顔をする。
「えっ、ちょ、なんでいるんですか?」
「言い方ひどっ!? まぁ仕事でこっちに帰ってきた感じかな〜半ば家出? みたいな」
先輩はけらけら笑いながらそう言った。
先輩は俺の2個上だから、高校卒業してから就職したのか‥‥‥。
それにしても何故こっちに来たのだろうか。
噂によれば、先輩はこの街から500キロほど離れた田舎へ転校したと聞いている。
なぜ、わざわざこっちに来てまで就職したのだろうか?
「そう、だったんですね。でも、先輩、かなり遠くに引っ越したって聞きましたけど‥‥‥」
「そ、それは今あんまり聞いて欲しくないかも‥‥‥」
先輩はどこか怯えたような目をして俯いた。
どうやら地雷を踏んだようで、しまった、と思い、慌てて話題を変える。
「そ、それはそうと、どうしてウチに?」
「あーそれはね」
そう言うと、先輩は俺から少し離れて、ニコッと昔と変わらない笑顔で言った。
「今日からここで、お世話になるからだよっ」
「‥‥‥はっ?」
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