第2話 酒場の皿洗い

オルガノは魔王との、闘いで酒場の依頼を受けられないほど、疲労していた。


夏の雨、朝から夜まで振り、貯蓄していた食糧も、底がなくなっていった。


フォウは、一日から二日はオルガノの様子を観ていたが、寝たきり状態で、以前、お世話になった、酒場のマスターにアルバイトを申し出た。


「なに!お前がオルガさんの依頼を受けるだ?

いやいや、無理だあの人は二時間もあれば、どんな依頼でもこなす、大ベテランだぞ」


酒場のマスターは大笑いで自分の額に手の甲をパチンパチンと叩く


「では、皿洗いをさせて貰いませんか?ばあちゃんは今、寝込んでいるので、役にたちたいのです」


フォウはオルガノが魔族と闘い負傷したと、マスターに伝える。


「なに!オルガさん闘病中か、なら依頼はくれてやれないが、皿洗いを許可しよう、仕事終わったら賄いと、栄養満点の野菜スープを持っていきな、作ってやっから」


15才ではまだ、依頼は受けることはできずに、歯痒い思いをするフォウは一人頭を抱え込む、皿洗いはフォウ一人では対応できず、他にもアルバイトの娘がいて、手伝って貰っていた。


「ねぇ!フォウくん?貴方、オルガさんの孫らしいけどどんな事を教わっているの?」


急に皿洗いの娘から話かけられ、一瞬どきりとしてしまった。


「ばあちゃんからは、剣術を教わっている、あと、読み書きも教えてもらっているよ」


二人、皿洗いをしながら、オルガの話に花が咲く

オルガは依頼を受け、端数の金額が残ると、孤児院や教会に寄付をしているとか、フォウの知らない話ばかり聞いてしまった。


「オルガさんには秘密にして置いた方が良いと思うの」


「そうだね、ばあちゃんには黙っておくよ」


何故か?オルガノの、聞いてはいけない話を聞いたみたいで、フォウは少し罪悪感が心に残る。


「おう!坊主、今日は早めに上がりな、オルガさんに温かいスープを届けてやりな」


酒場のマスターは鍋いっぱいの野菜スープをフォウに持たせて、フォウを身支度させる。


酒場の外は雨が降っており、酒場のマスターはレインコートをフォウに被せた。


「ほれ!うちで古くなった、やつだから、持っていきな」


ガハハと豪快にマスターは笑い、フォウはぺこりと挨拶をして酒場を後にする。


森の近くまで行くと、魔狼のクロが座って待っていた。


「クロ、待っててくれてありがとう、クロにも温かい物を作るね」


そお言うと、クロはスクッと立ち尻尾を振ってフォウと仲良く家に帰った。


うつむいて、オルガナが心配で涙をためながらフォウはたずねる。


「奴はなワシのパーティメンバーを殺しにまわってる、この休戦中にじゃあの様子だと聖女様に何かあったのかもしれん」


オルガナは怒りを殺しフォウに話を振るが、フォウがくしゃみをしたので、家の中に入ろうと二人と一匹は家に入って行く。


翌朝、オルガナはまた居らず、テーブルの上に


「夕方頃に帰る!」と置き手紙があった。


おそらく、昔のメンバーに会いに行っているのだろうとフォウは心配だったが、オルガナはこれまで、一度たりとも約束は破ったことはなかったので、それほど心配はしていなかった。


オルガナの強さは異常で、岩を豆腐のように一瞬で切り、イノシシすらも愛用の剣で一振りで仕留める剣術の達人だったからだ。


一応、心配なので教会に傷薬を貰いに、フォウは家をでる。


「クロ、今日は教会に行くから家で留守番しててね、帰りにクロの好きな乾燥肉を買って帰るから待っててね」


クロは嬉しそうに尻尾をブンブン振り森の出口まで送ってくれた。


フォウは教会に着くと神父から傷薬を貰おうと、神父に話すと


「今は、傷薬の材料がなくてな、この国では取れない素材なんだよ、魔族の国に入る洞窟があってそこに生えている薬草があるんだが、誰も近づきたがらないんだよ」


洞窟には最近、魔物が住み着き、行商人も困っていた。


酒場のマスターに薬草を取りに行く話をしたが、許可されなかった。


「坊主!どうしても行きたいなら、お金を払って冒険者を雇え、そしたら行ってもいいぞ」


以前、酒場のアルバイトをしていた時のお金があまっているから、お金にはまだ余裕がある、誰を雇うかと考えていると、酒場のマスターが冒険者のボードに案内してくれた。


「ここが、初心者の冒険者が乗っているボードだ、ゆっくり選びな」


魔法使い、シーフ、戦士と色々な職業の冒険者が多数いた。


フォウは身軽で、薬草に詳しい冒険者をマスターに依頼すると、シーフと魔法使いの紙を持ってきてくれた。


「どっちにする?どっちも初心者だが、優秀な人材だ両方は金額的にキツいと思うからどっちかだ」


「じゃあ、魔法使いの冒険者でお願いします」


フォウは雇うのが、魔法使いならばその場で作ってくれると打算したのだった。


「わかった、では依頼書をだしておくぞ!今日は遅いからまた明日にでも来てくれ」


フォウは酒場のマスターにありがとうと礼をすると家に着く頃は夕方になっていた。


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