型破り傭兵の天空遺跡攻略

三上こた/角川スニーカー文庫

プロローグ

 ――赤い雪原に、吹雪が降っていた。


 レイラの身体に叩きつけられる吹雪は痛いほど強く、まるで白い壁のようになって彼女の周囲を包んでいた。

 しかし、そんな吹雪を持ってしても、この雪原の赤さはかき消せない。

「グレン! しっかりして! グレン!」

 悲痛な声を上げるレイラの胸の中で、隻腕の少年がぐったりと倒れ混んでいる。

 切断したての右腕からは鮮血が流れ出て、この雪原を染め上げていた。

 少年は焦点の合わない瞳で姉のほうを見上げ、ゆっくりと唇を動かす。

「ねえ……さん……逃げ……」

 そこで、彼の言葉は途切れた。

 残されたのは、たった一人の少女レイラだけ。

「待ってて、私が――」

 連れて帰るから、と言いかけた時である。

 目の前に、何者かの気配を感じた。

「あ……」

 思わずレイラの動きが止まる。同時に、思考も止まった。

 それほどまでに、目の前にいるモノは絶望的な存在だった。

 通常の人間の倍はあろうかという身長。頭まですっぽり隠す真っ黒な外套。その中から見える、骸骨の顔。

 そして――ついさっき少年の腕を切断した、大鎌。

「雪原の死神……!」

 真っ白な思考の中、それでも言葉を紡げたのは、恐怖故か。

 死神は何の感情も見せず、外套の中で爛々と光る赤い瞳でレイラを捉えながら、ゆっくりと大鎌を振り上げた――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る