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さて、あやしい部屋のあやしい仕掛けを解いて(?)現れた階段だったが、当然俺たちはそこを進む以外選択肢はなかった。場内を歩き回ってもやつの姿はどこにもなかったんだ。きっとこの奥にいるに違いないってもんだ。
階段は暗く、空気はひんやりしていた。まるでこの城に来る前の洞穴に戻ったようだった。変態女の照明魔法の光を頼りに、俺たちはどんどん先に進んだ。
「よいか、ぬしたち、ここから先はすごく危険な気配がするぞ。気を付けてゆくのじゃ」
と、その途中、亀妖精が俺たちに言った。変態女の胸の谷間からひょっこり顔を出しながら。
「お前、しばらく姿が見えないと思ったら、そんなところに隠れていたのかよ」
よりによってそこかよ。ちょっとうらやましくなるじゃねえか……あくまでちょっとな。
「いやあ、今のわしはただのか弱い思念体じゃからのう。あんな面妖な魔物どもに食われてはかなわんし?」
「お前、本当にディヴァインクラスなのかよ」
いくら思念体とはいえ頼りなさすぎる。しょせん、死にかけのババアの亀か。
やがて、俺たちは階段を降りきって、城の地下の層に到達したようだった。そこはやはり暗かったが、しっかりした壁のある大きな広間だった。また、広間には細長い箱が等間隔に並べられていた。大きさは人が一人は入れそうなくらいだ。というか、これ……棺桶か?
「もしかして、ここ墓地なのか?」
「そうね。ただ、普通のお墓じゃなくて、霊廟みたい」
変態女は壁に照明魔法の光を当て、そこに刻まれた文字を見ながら言った。古代文字で何か描かれているようだ。
「れいびょう……って、墓とは違うのか?」
「死者を弔う場所という意味では同じだけど、普通の墓地よりは格式が高いものね」
「ふーん? 格式ねえ」
古墳とかピラミッドとかそういう類のものなのかなって。
「でもなんで、こんなところに死者を祀る施設があるんだ? ラファディって男の城だけをここに封印したんじゃなかったのかよ?」
「そ、それはそのう……わしにもよくわからん」
亀妖精は力なく首を振るだけだった。マジで頼りにならないな、こいつ。
「あ、そういえば僕、さっきからなんだかすごく気分がいいんですよ」
と、そこでリュクサンドールがその場で大きく深呼吸しながら言った。
「きっとここが死者を祀る場所だからでしょうねえ。死霊たちの後ろ向きな暗黒オーラに満ち満ちていて、体の芯からリフレッシュしてくる感じです!」
「そ、そう……」
そういやこいつ棺桶を寝床にしてる不死族だったっけ。こういう場所はホームって感じか。
「そうね。確かにここは邪気が強すぎるわ。ここに眠っている死者たちの眠りは決して安らかなものではなさそうね」
変態女は険しい顔をして並んでいる棺桶をじっと見ている。
と、その直後、それらのフタが次々と開いた。内側から。そう、中の人が外に出てきたのだ。
「お、ゾンビか吸血鬼か?」
暗くてよく見えないが、ホラー映画のワンシーンみたいでちょっとワクワクしてきた。どんな不死族が出てこようと、俺の近くにいるヤツよりはだいぶマシなはずだしな!
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