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 さて、突然俺たちの目の前で始まった動物バトルだったが、当たり前だが勝負は一瞬でついた。ヤギの圧勝だ。


 まあ、竹もどきを駆除するお仕事もろくにできない無能が束になったところで、俺の仲間にはかなうわけはないよな。俺の仲間だしな。


 ただ、ヤギのやつ、今までのバトルでは魔法しか使わなかったくせに、今日は魔法は一切使わず、体だけを使って戦っていた。しかも、その動きはキレキレかつ力強く、異常に強かった。さすがに俺やヒューヴほどではないにしろ、20ハーウェルくらいはありそうな近接戦闘能力だった。なぜそんなに強いのに、今まで魔法しか使ってこなかったんだ。


「……わたし、聞いたことがあります。カプリクルス族は生まれつき強靭な肉体を持っているそうですが、決してそれを争いに使わないと。厳しい自然と対峙するためだけに使うと」


 と、そんなヤギ無双の様子を見ているとユリィが言った。なるほど、あの強さは主に崖を登るためだけのものなんだな。まあ、今は理性が消失してるから普通にそれで暴れまわっているようだが。


 やがて、パンダもどきのモンスター、ケルジャンはほぼすべてその場に倒れ、動かなくなった。


「ウオオオッ! ヤッタゾ、トモダチ! オレカッタ! カッタゾ!」


 と、ヤギは勝鬨をあげている。


「まあ、見た感じ全員半殺しから九割殺しぐらいか。この様子じゃこいつらとの『お話し』もしやすくなったみたいだな。ありがとな、レオ」


 俺は興奮しているヤギに言うと、近くに転がっているズタボロのケルジャンを軽く蹴ってあおむけにし、再度ワンダートレントについて尋ねた。


 しかし、


『に、人間ごときに、話すことなど……何もない……ぐふぅ……』


 俺の仲間にやられて虫の息のくせに、まだこんなこと言ってやがる。うーん、もう少し痛めつけて「わからせて」やる必要あるのかな?


 と、そう考えていると、


『あ、もう別にこいつらに話を聞く必要はないですヨ、マスター』


 ゴミ魔剣がいつものように俺の思考を読んで言った。


『すでに、ワタシのほうでこれらの魔物デバイス蓄積ストレージされていてる該当データを取得済みです』

「ああ、そういや、そういうこともできたな、お前」


 ゴミのくせに、無駄に多機能なんだよな。


「じゃあ、こいつらもう用済みか」

『そっすネー』


 というわけで、俺たちはそのままケルジャンたちにとどめをさした。虫の息のまま放置して先に進んでもよかったが、まあ、けんかを売られたんだから、これぐらいは当然だ。俺の話もろくに聞かないクソどもだし。


 とどめの一撃はほとんどゴミ魔剣でやったので、死体は残らなかったが、クマ肉クマ肉うるさいバカがいたので、一体だけは普通に殴って殺し、その後、それを解体してクマ肉バーベキューにしてみんなで食べた。まさに弱肉強食の自然の摂理だ。


 そして、バーベキューしながら、俺たちはゴミ魔剣がケルジャンたちから吸い出した情報をもとに、再びミーティングをした。ゴミ魔剣の吸い出した情報はすみやかにキャゼリーヌに転送されたので、例の左目プロジェクターを使っての話し合いだった。もはやパワポだ。


「ケルジャンたちから取得した情報をネムどのが解析したところによると、今後、このあたりにワンダートレントが現れる可能性が高いようだ」


 と、空中に投影された地図の一角を指さしながら言うキャゼリーヌだった。現在俺たちがいるところから、西に少し行ったところだった。


「なるほど。ようは今からここに行けばいいんだな」


 データに強い仲間がいると、こういうとき便利だな。親切設計のRPGぐらいに次の目的地がわかりやすいぜ。


 というわけで、バーベキューを終えると、俺たちはすぐに西に、そう、ワンダートレントが出そうなポイントに向かったわけだった。

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