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「ま、待て! 待て、皆の衆! これは何かの間違いであるぞ! 拙者は断じて勇者アルドレイなどではござらぬ!」
とりあえず、全否定するしかなかった。動揺のあまり謎のござる口調になってしまったが。
「えー、でも、私とホテルで会ったじゃない?」
「そ、そんな記憶は拙者にはござらぬ! 他人の空似というものでござろう!」
「つまり、あなた勇者様のソックリさんってこと? ほんとぉー?」
踊り子の女は怪訝な目で俺をじっと見つめた。うう、さすがに「ソックリさん」でこの場を切り抜けるのは無理があったか。
と、そのとき、
「あ、この有翼人のイケメン、昨日うちの店に来たよね?」
集まってきた店員の女の一人が、俺の持っている手配書を指さして言った。
おお、渡りに舟とはまさにこのことだ! 紆余曲折いろいろあったが、さっそく情報収集……と、思った矢先、
「確かこの人、自分は昔、勇者アルドレイの仲間だったって言ってたー」
なんかまたアルドレイ関係の話になっちゃったんだが!
「え、そうなの? こちらのお客さんも、ついさっき、この有翼人の人を自分の知り合いだって言ってたけれど?」
と、さっきまで俺の接客をしていたプロの女と新人の女が、俺をじーっと見つめ始めた。うう、まずいぞ、この話の流れは……。
「えーっと? つまりこの有翼人の人は、自分は昔、勇者アルドレイの仲間だったって言ってたわけで、今ここにいるこの人も、この有翼人の人のことを自分の知り合いだって言ってるわけで……」
「やっぱりこの人、私がホテルで会った勇者様ご本人じゃない! ソックリさんなんかじゃないわ!」
踊り子の女は再び俺を勇者認定しやがった。くそう、くそう!
「い、いや! そもそも話がおかしいでしょう! 君、ホテルで踊る仕事あるのに、なんでこんなところで働いてるの!」
「え、普通に仕事掛け持ちしてるだけだけど」
「えっ」
「最近、例の入国審査で不景気で。そうでもしないとやっていけないのよねー」
「そ、そうね。ダブルワークなわけね」
どっかの勇者様が余計なことしたせいでね。ハハ……。
「でも、おかげで二回も勇者様に会えたんだから、捨てたもんでもないわよね、私の人生!」
と、踊り子の女は俺に抱きついてきた! むにゅうっ! そのやわらかおっぱいが俺の胸に当たる! おおおう……。
「あ、ずるーい! 私も勇者様におさわりしちゃおうっと!」
「私も私も!」
「あーん、待ってぇ、私もー」
わらわら。とたん店員の女たちは俺を囲み、もみくちゃにしはじめた!
「ちょ、待て、お前ら……う、うはあっ!」
無数のおっぱいに全身をつつまれ、俺はもはや何も言えなくなってしまった。なんという至福。いろんなおっぱいがあって、みんな違って、みんないい! 天国か、これは?
まあ、どさくさに男の客まで集まってきて、俺の髪やら服やら引っ張ってくるのはうざかったが。おっぱいのないゴミは消えろ!
やがてそんな俺たちのもとに、この店の支配人だという男がやってきた。女たちはいったん俺から離れた。一人ずつ俺のほっぺにチューをしながら。うひょひょ。
「これはこれは、勇者アルドレイ様! 当店にご来店いただき、まことにありがとうございます!」
支配人の男は俺に深々と頭を下げながら言った。
「ま、まあ、本当はプライベートでこっそり楽しむつもりだったんだがな。バレちゃしょうがないか……ハハ」
もはや開き直ってこう言うしかない俺だった。プライベートって何だよ、と、内心セルフツッコミしながら。
「さようでございますか。多くの店の中から当店を選んでいただき、本当にありがとうございます。今夜はごゆるりと当店自慢のサービスをお楽しみくださいませ! もちろん、お代は一切いただきません!」
「え、タダでいいの?」
「はい、もちろんでございます! あなた様はこの世界を救った偉大なお方! あなた様のおかげで、私たちの今の平和な暮らしがあるのでございます! そんなお方からお金をいただくことなど、とてもできません!」
「マ、マジか!」
ここにあるおっぱい、全部無料か! 無料で揉んだりはさんだりできるのか!
「そ、そうか。そこまで言うのなら、まあ、ちょっとぐらい遊んでやってもいいかな……」
「ありがとうございます!」
と、支配人の男が言うと、周りの店員の女たちも「ありがとうございますぅ!」と、復唱した。さらに周りの音の客たちも何やら俺に拍手してきた。うっは、俺氏、めっちゃ歓迎されてる!
「しょ、しょうがないなあ、もー」
にやにやが止まらない俺だった。やっぱこの店、サイコーだわ!
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