羊毛の陽

夢の中の羊にそっと触れてみる


陽だまりのぬくもりをそのまま渡してくれた


どこに行けばいいのかと聞いたら


どこにでも行けばいいという



それからどこにでも行った


海岸線の波が崩れていく場所


マグマが溢れて山になっている場所


人のことばと機械のことばが折りたたまれている場所


雪がほどけて川になる場所


どこにでも行った



約束は無かった


約束は必要なかった


ただぬくもりの温度だけを覚えていた




また羊に会うことがあれば


陽だまりのお礼に何か返してやりたい


それまでずっとどこにでも行く


戻る道だけは見当たらないから


また昇る陽だけが目印

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雲と振動 守山 彬 @moriyamaakira

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