ねえ、驚いてよ!

@suupalsannkaidatemannsixyonn

第1話

いつもと変わらない日常、その影に潜む現代の幽霊達、彼らは人間の「驚き」の感情を食べて生きている。

そんな中、朝っぱらだというのに白く丸い幽霊。

新米幽霊のペコはお腹をさすりながらさ迷っていた。


「う〜お腹すいた〜〜」



普段は夜にしか現れない幽霊も空腹に耐えかねて街に出る事もある。

登校中の女子高生達3人が横に並んで楽しそうにお喋りをしている。


(よし、一つ脅かしてやれ)



ペコはゆっくりと背後に近づき、眼を充血させ見開き口を大きく開けた。


「う〜ら〜め〜し〜〜やーーー!!!」

「え?何?」



女子高生の一人がペコの声に驚き、勢い良く振り向いた。

反動で肩に下げていた鞄がペコの顔面に直撃する。


「ゲフっ!?」


「どうしたの杏奈?」

「なんか不審者の声がした気がして…」

「え〜〜何それ怖〜〜、ウケル」



コンクリートの上に倒れ込むペコに気づかずにそのまま歩き出す。


「痛ったー、オイラ幽霊なのに!こうなったらあの杏奈とか言う奴何が何でも驚かせてやる!」



そお言って早々と学校まで飛んでいった。




「はーい、ホームルーム始めるぞ」



先生の掛け声でバラバラだった生徒達が一斉に席に座る。

ペコは教室の扉からは半分だけ顔を出し辺りを見回した。


(居た居たさっきの、叫ぶ程驚かせて恥をかかせてやる)



再度怖い顔をつくり近ずく。


「恨めしやーーー!!!」



無反応の杏奈。


「恨めしやーー!、恨めしやーったら恨めしやーーー!!!」



何度呼びかけても気づいてもらえない。

おかしいなさっきは聞こえていたのに。


「もうどうて驚いてくれないの!?もしかして教室が明るいから見えてない?」



それならばと次の手を打つ。


放課後、杏奈がトイレに行っく為に席を立ったのを確認し先回して待ち伏せる。


ペコは手を擦り合わせて手のひらを赤く染める。



「グッフッフ〜〜♪この取って置きの怪奇インクで壁じゅう赤い手形まみれにしてやる」



杏奈とその友達がトイレに来た。


「うわ何これ」

「さ〜?誰かの悪戯でしょ」

「先生に言ったほうがいいかな?」

「後々面倒だから無かったことにしよう」

「そだね犯人探しとかやだし」



まっ各驚く気配がない、悔しさで頬を膨らます。

突然、杏奈に体を鷲掴みにされ、洗面台でバシャバシャと洗われた。


「何をする!?やめ、ブゴ×@¥&!?※!!?!ガハッ!」



そのまま赤い手形を消す雑巾にされた。

杏奈はトイレ掃除係だった。





「う〜ひどい目にあった、だけど次は体育……今度こそ」



疲れ切って居てもまだ諦めないペコ、何とか体育館についた。


「ホゲ〜〜〜やめ〜〜〜お許しを〜〜〜」



バトミントンの羽に細工するつもりが、羽に括り付けられコートの中でひたすら打たれる。




一人帰宅する杏奈、ペコはもう限界とばかりにふらふらと浮遊しながら背後を行く。


「今日は散々だったなーー」



杏奈が一軒の屋台に足を止めた。


「おじさんバニラアイスクリーム下さい」

「はいよ」



ベンチに座に座りヘタレこむペコ。

グ〜〜とお腹が鳴る。

当然だ、もう何週間も驚かせていないのだか。


「はい、あなたの分」



そう言って杏奈はペコにアイスを手渡す。


「いや……オイラ幽霊だから食べれないよ」

「お供え物ってあるでしょ?生きた人間が食べさせたいと思っていれば食べれるのよ」

「そうなんだ、有賀う…」



渡されたアイスを一舐めしてから、ハッとなって杏奈の顔を見上げる。


「気づいてたの?」

「そらそうよ、私ココらでもちょっと有名なお寺の子だもの」



ペコが頬を膨らませ怒る。


「それじゃ分かってて、オイラをあんな目に合わせたんだ、やな感じ」

「悪さしようとしたから償わせただけでしょ?何もしなきゃ何もしないよ」

「それは出来ない、お腹すくもん」



杏奈は少し考え込み再度話し始める。


「だったら私の専属妖怪にならない?妖怪になれば人間のものが食べられるよ?」

「専属妖怪って何するの?」

「召使い?みたいな感じ、どうするかは私次第だけど…」



正直、人間の下に付くのは嫌だけど…

再度アイスを口に含む、甘くて美味しい、こんなに美味しいもの初めて食べた。

この機会を逃したらもう一生、食べられないかもしれない。


「分かった、妖怪にして良いよ」

「良いよ?」

「いえ、して下さいお願いします」

「宜しい」



杏奈がペコの頭をそっと撫でるとドロンと煙に覆われ猫に姿が変わった。


「猫の幽霊だったのね。今日から貴方は妖怪二股、名前は…そうね勾玉とか如何かしら?」

「うん、いや………はいお願いします」



杏奈はペコを抱き上げる。


「さあ帰って夜ご飯にしましょう、家の煮物は絶品よ」



夜ご飯という言葉に目を輝かせる。


「ご飯!嬉しいです」

「でも〜〜その前に雑巾になってもらおうかしら?」

「え!?」

「ふふふ、冗談よ」

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