第17話 終わったニャー

 カイは意識を取り戻す。 

 全身から嫌な汗が噴き出す。

 雷に穿うがたれた錯覚を起こし、大理石の地面に膝をついている。

 周囲にはカイと同じように息を切らしているクロとラミア、そしてそんな彼らを心配そうに見ているエレインの姿があった。



「な、なんなのよ、あれは……」


「エレイン、ミャー達はどのくらい意識を失っていたニャ?」


「ほんの一瞬でした……よ」



 カイは膝をついてラミア達に尋ねる。



「ラミアとクロも見たか?」



 その質問に押し黙るラミアとクロ。

 それを肯定と受け取り、カイは深呼吸する。



「クロ、やっぱりその短剣を持っていてくれないか?」


「……分かったニャ」



 クロは短剣を慎重に持った。

 直後、その大部屋の扉が勢いよく開かれる。



「ラミア様、クロ様、無事ですかッ!?」


「ミネルバッ!? 貴方達も大丈夫なんでしょうね?」



 部屋の惨状に驚くも、ラミアの無事を知り胸をなでおろすミネルバはエルフの精鋭達とともに部屋に入ってくる。



「外の獣人の方々は、気絶しております」



 ミネルバは部屋の中で倒れているクロエとゲルダに視線を移す。



「この方達は……」



 悪夢を忘れようと、カイは状況の説明をする。



「今回のサザンの住民を操っていたのはゲルダって男で、そこの女性はゲルダに操られていたクロエです」


「……クロエ? 数年前にお亡くなりになったクロ様のお姉さまではないですか」


「今回のことではっきりした。敵は死者を蘇らせる手段を持っている」



 ミネルバはクロを心配そうに見るが、



「ミャーは大丈夫ニャ。それよりも外は大丈夫なの?」


「エルフ数名に確認してもらったところ、城の外の獣人は重症者はいるものの、死者はいない模様です。しかし、こちらの陣営では多大な被害が出ました」


「多大な被害?」



 別に外の戦いを軽視していたわけではないが、カイを含めキリアの兵は大国にも後れを取らない実力を有している。

 しかも、『漆黒の魔女』ことティアラやエドだっている。



「その……未確認の化物が現れまして、私達の気付かないうちに城内に入ったと報告があったのですが……」


「化物のほうならこちらで倒した。もしかして外の被害は甚大なのか?」


「……エド様、ティアラ様、ミーシャ様が……」



 ミネルバの神妙な声音にカイは手が震えるのだった。

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