プリンセス&ナイト ~破壊剣士と追放王女~

四宮マナ@異世界ファンタジー執筆中

第一部 プリンセス&ナイト

第1章  滅亡のとき

プロローグ 覚醒

 (熱い、熱い、熱い、熱い)



 目の前一面、火の海につつまれている。

 顔を動かせないけど、全身火傷しているのだろうか。

 痛みは感じない。

 痛覚が麻痺まひして、周囲の熱以外何も感じない。


 

 ……違う。



 今にも途切れそうな意識の中で、一つだけ残された感情がくすぶる。

 しかし、感情だけが先走り、身体に力が入ってくれない。

 もうダメか。

 『憎しみ』に身を任せていたが、限界はきていた。

 なんのために戦ったんだっけ? 



 ……復讐ふくしゅうよ。



 わかっている。

 だけど復讐ふくしゅうしたところで、死人はよみがえらない。

 


 ……誰のせいで死んだの?



 盗賊のせいだろ。

 あいつらが、この村さえ、襲わなければ。



 ……本当にそれだけ?


 

 無意識に頭にきこえる質問は、まるで俺の本音を言わせようとしてるみたいだ。

 自嘲気味じちょうぎみに笑おうとするが、力ない笑みからは空気の吐き出す音しかしなかった。

 俺のせいか。

 俺が村を離れたから。

 遠くに行ったから間に合わなかった。



 ……そう。



 いくら自分を正当化しようとしても、この事実は変わらない。

 


 ……おまえは逃げて、死ぬつもり? ふざけないで!



 敵に抱いていた『憎しみ』と、自身にむけた『怒り』が混ざっていく。

 その瞬間、身体の内から、むらさきかたまりがわきでてくる。

 抵抗する気力もなく、俺はその塊に取り込まれていった。

 


 ……これは罰。最期まで無様ぶざまに戦いなさい。

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