ピアノと少年

なるこ葉

第1話

ピアノと少年


うちにはうたうようせいがいる。

とても綺麗な音でうたをうたうの。

でも、ぼくだとだめ。うたがへたくそ。

ママが触れるととても綺麗にうたうんだ。

ぼくもママみたいになりたくて、たくさんさわったけど全然だめ。

ある日、ママが一人でようせいの前にいたの。とても悲しい歌声で、ママも泣いていた。

今日はパパがいなくなった日だった。

そのかなしいうたは毎年続いて、ぼくはこっそり見ていた。

ようせいはいいな、ママとうたをうたえて。

ぼくにはこんな顔も見せてくれないのに。

ぼくはこっそり、ママの真似をした。このうただけを何度も何度も練習した。

ある日、あんまり夢中でママが帰ったことに気づかないで弾いていたら、ママはぼくを抱きしめた。

泣きながら、笑いながら、抱きしめた。

次の年から、二人で弾くようになった。

その曲は今までよりも明るく、温かく聞こえるようになった。

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ピアノと少年 なるこ葉 @mandr

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