#-15
「なるほど。そうしてあちらに身を寄せていた息子から反感を買い、貴方自身の手で殺めたんですね?」
「なぜ、それを!?」
突然の発言に思わず言葉を零す国長。
言った直後、即座に口に手を当てるが時すでに遅し。
レキの糾弾は止まらない。
「簡単な話ですよ。先の嘆きは息子さんが駆け落ちしたことに対する嘆きじゃない。根絶やしを抵抗されたことに対する嘆きでしょ?」
「だからなんでそれがわかるんだ!?」
諦めたのか。今度ははっきりとそう発言をした。
ただ、いいかげん話を折られるのにうんざりしていたレキは少し声を低くする。
「うるさいな、人の話は最後まで聞けよ」
「ッ!!」
すると国長は簡単に黙った。
あの試合と影の能力から力量差は一目瞭然だ。抵抗しないのは当然だろう。
「簡単な話だって。息子さんの意志を組んだんでしょ?
つまり息子さんは逆のことを、人を妖の方へ招き入れるための準備を進めていた。
そこで貴方と息子さんは見事に対立した。対立したのなら止めは刺すでしょ」
「違う! アイツは奴らに洗脳されていた! だから私はその洗脳を解こうとしたんだ!」
本音が出た。
だいたい洗脳という言葉が出る者の方が洗脳されている可能性が高い。
例えば「人と妖は仲良くしてはいけない」という
誰がそう言いふらしたわけでもない。ただ昔戦争して、いまは冷戦状態にある仲だってだけだ。
そこから「仲良くしてはいけない」というイメージが先行して勝手に脳にこびりついている。
そしてそれを子に教え、押し付ける。暗黙の了解なんて格好の良い洗脳の一種だ。
そんなイメージ、勝手に植え付けるな。
「あぁ、したら自害したと」
「ッ――‼」
信頼を寄せていた者に裏切られるという行為は死とほぼ同義。
たとえ頭では理解していても心が追い付かない。
それが誰かの命を懸けた話なら尚の事。その絶望は計り知れない。
そして絶望は呪いになる。
この国長なら息子の死という呪いを押し付けられたのだろう。
「なるほど」
同情する気はない。擁護する気はもっとない。救いを与える気はさらさらない。
レキの場合は。
ただ、奴ならどうだろう。
レキはドアを開ける。
「だってさ、アラクネ」
その先に立っていた者を見て国長は目を見開いた。
白い肌に赤い眼。そして所々に見える青い筋。
アラクネ当者だ。
「アラクネ!? なんで! 殺したんじゃ!?」
「いえ? 貴方達がボクらを騙していたようにコチラも騙させて頂きました」
そう、あの時レキは彼を、明確にはアラクネが食していた男を握り潰した。
「人の身でありながら人に仇なして、お前は何がしたいんだ!」
置かれている状況が理解できていないようだ。
いや理解しているからこその断末魔なのかもしれない。
「別に。ただ自分の中で正しいと思ったことをしてるだけですよ」
だからレキは優しく答える。
そしてそれを最後に国長の周囲の影を操作して手と足を縛った。
アラクネはそれを確認すると重たい尾を引きながら国長の方へ近付いていく。
「来るな、来るなァ!」
「それが例え、エゴだとしても」
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