#-11
よくある話だ。
現在冷戦状態にある両者だが、人側はいずれ妖を掌握しようと考えている。
そのため、今の人の限界を超えた能力を得るため、肉体能力が人より優れる妖を捕え実験を施す。
元来、妖とは出自不明なうえ、人と似た姿を持つことを不気味がり付けられた名だ。
しかし〝怪しい〟からではなく〝妖しい〟から字を取られたのは、動物にも似た愛嬌ある特徴を持つ者が人と最初に邂逅したから、と言われている。
ただ今となっては善良の妖を捕獲し実験をする人と、領地に入ってきた人を捕食、撃退する妖。
果たしてどちらが妖なのか、レキの中ではわからなくなっていた。
「奴から聞いたのか?」
驚いた。
こいつはアラクネを単なるバケモノだとは認知していなかったようだ。
そう思いながらもレキは眉一つ動かさず自分の推察を淡々と話す。
「半分は。もう半分は推測です」
「なるほど。面白い憶測だ」
推測を憶測と罵り、鼻で笑う国長。
だがその額には脂汗が滲み出ており、余裕のなさが伺える。
「ところで君の仲間の妖。いまどこにいるのかな?」
だから、こんな突拍子の無いことを言う。
しかし、やっぱり妖ってバレてたか。
アイツの変装ヘタクソなんだよなぁ。帽子かぶってなんとかなるなら侵入し放題じゃないか。
そう言えば、確かボクが妖の国に潜入しようとした時は犬耳をプレゼントしてきたっけ。
レキはそう思い更け、心の中で大きくため息を吐く。
まぁ、別にバレても何の支障はないのだが、と余裕そうに肩をすくめるのも忘れずに。
「さぁ。中心部にある公園を待ち合わせ場所にしているので、その付近にでもいるのでは?」
「なるほど。……本当にいると思うのかい?」
ククッと国長は喉を鳴らす。
恐らく美由を捕まえてレキの行動を制限しようと言う魂胆だろう。
ただそれは愚業という言葉ですら生温い蛮行。
「えぇ、いると思いますよ。だってアイツ、肉弾戦ではボクより強いですし、そんなにお人好しでもない」
元々、彼女は白虎と呼ばれる妖の中でも指折りの戦闘種属とその派生種属の猫又の混血だ。
わけあって人馴れしており、一見無害に見えるが、本気を出せば国一つ一日で崩壊させることが出来る。正真正銘のバケモノ。
そんな奴をあの程度の奴をバケモノ扱いする国が捕まえれるはずがない。
「話、戻していいですか?」
口調は優しいままだが、レキの赤い眼が更に鋭くなる。
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