第二章 副業エンジニア

第14話 金が無い

「金が無い…」


そう言って煙草を口に加えつつ財布を見つめる青年は掛田かけだ翔太郎しょうたろう。工場で工員として働いているが年収は200万ちょっとで実家住まい。


「あぁ…給料日前だから新刊買ったらもう金がないな…」


工場近くのコンビニでタバコを買って財布の軽さに気づいた。朝の喫煙所で一人、財布の中を確認していた。


「おはよう、翔太郎くん」


喫煙所に上司の寺田てらだ勝則かつのりさんが入ってきた。


「おはようございます」


「財布を確認して…さては…デートで軍資金の確認だな!?」


「今月色々と浪費してお財布が軽くて泣いてたところですよ。」


「浪費しちゃってるのかぁー」


「最近話題の副業とかも少し考えちゃいますね」


「あぁ~、たまにTVやニュースでやっててちょっとそそられるね。でも、うちは副業禁止だから気をつけてね」


「あ、そうなんですね。わかりました。」


 そう言って翔太郎くんは喫煙室を出て作業着に着替えに行った。


 仕事を終えて、翔太郎くんは人気漫画の新刊を買いに来ている。目的のものは本屋の目玉として店先に並んでいた。そこには売れ筋の本が色々と並んでいる。

 ふと漫画の横に並んでいたものが翔太郎くんは気になった。


【未経験から10!なろうエンジニア!】


翔太郎くんは副業というのが気になって手に取った。


『パソコン1つあれば出来る!投資などと違って種銭要らず!スキルになって転職にも有利!フリーランスになって稼げる!休日の空き時間で稼げる!』。更に本の帯には元IT企業の社長の有名人が『この本は本当に未経験から稼ぐことも夢じゃない』と推薦文が書いてあった。


 翔太郎くんは買うことにした。今まで稼げる方法を色々と調べたりもしたが株やFXはが必要だし、下手するとマイナスになると聞いたりして怖くて手が出せなかった。

 だがこの本を軽く立ち読みしてこんな働き方があるのかと目から鱗が落ちた。パソコン1つあれば副業は出来るし、種銭もない。スキルになるから転職出来るかも知れない。

 投資と違って危険性がなくて嬉しいことづくめである。買うしかないと思った翔太郎くんは立ち読みしてた本を、そのままレジに持っていった。


「2点で2,475円になります」


翔太郎くんは財布を見て千円札が1枚しかなかった。


「すいません、カードでお願いします。」


そう言って翔太郎くんはカードを差し出した。

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