1章第7節 追跡

即席コンビを結成しその次の朝二人は朝食を食べながら今後の作戦を練っていた。

「一番の問題は、あの狐をどうやって探し出すかだな。まず奴の目的が不明な時点で行き先を特定できないからな」

シルバはクリームパンを頬張りながらテレビを眺めながら喋る。

「ただ大量殺戮を繰り返すならば街中でやればいいだけですもんね…でも目立たないようにするにしては証拠を残しすぎですよね。後クリームパン食べ過ぎです。もう食べちゃダメです」

クリームパンを確保して氷空はテレビのニュースを見てた。そこには昨日の真夜中の戦いの舞台であったネクロの元アジトが壊滅した事、そして構成員が半数以上死亡し残りは行方不明というニュースを大々的に報じていた。

「目立ちたくないってよりは獲物を選んでいるっぽいな。奴にも殺しの美学があるのか、それともクズを狙う利点があるのか…今のところは何もかも不明だな」

シルバの言う通り情報があまりに不足していた。目的・動機・行動範囲この状態から探し出すのは一般人であれば困難を極める作業である。だが氷空は探偵、探し物のプロである。

「確かに二人で探せば追いつけないかもしれません。でも沢山の人の目を頼れば見えてくるものもあります!」

シルバが「沢山の人の目?」と聞き返すと氷空は若干のドヤ顔を見せながらスマホのSNSを見せる。

「2020年現在、日本人口の約7割が何かしらのSNSを利用しているのです。今のテレビの動画も視聴者提供の物が主流になっています。どこかしらで誰かが目撃してる可能性は高いんですよ。現に昨晩、シルバさんが私を横に抱えてビルの谷間を飛んでる動画もかなり不鮮明ながら撮られてますよ。…まぁ合成と思われてるので心配はないと思いますけど」

氷空はそう言うと10台のタブレットやスマホとノートPCを開き調べ始めた。シルバが食器の片づけ等をし終わった頃にちょうど氷空が白露の足取りを見つけていた。

「まだ…確証はないですが白露刹那と思わしき人物が旧港方面から東の方面へ移動している発言が97件存在しています。美人は目立つので探しやすいですね~」

氷空はなれた手つきでPCで地図を開く

「この地図は私達の居る街の衛星写真です。ここに先ほどの発言の大まかですが発信した場所を移しますね」

その画像を見たシルバは驚嘆する。そこには白露刹那と思わしき人物が移動した痕跡が地図上に現れたのである。

「ここに白露がいるのか。今すぐ乗り込むか?」

シルバは白のジャージから一瞬で黒いコートに早着替えを済ませ戦闘モードになっていた。

「待ってください!まだこれは一つの痕跡だけです。これだけではまだまだ不十分です。というか着替えるの速すぎませんか??」

呆気を取られてるシルバにタブレットを渡す。

「シルバさんにも手伝ってほしいんです。私は引き続きSNSで過去の足取りを追います。シルバさんには過去に起きた不審死や不審な事件に関して調べてほしいのです。恐らく白露刹那は殺害方法は昨晩と同じと推測してます。でも死体の処理などは杜撰でした。必ず残ってるはず…!それを探し出して欲しいのです」

シルバの後方支援の有難味を戦場で学んでいる。

「任せな、そっちも適度に休んでな」

氷空の指示を快諾し二人で白露刹那の行方を過去から現在まで探る長い作業へと突入する。


白露刹那の痕跡を追い集め数時間、日が傾き辺りを橙色に染め上げた頃に二人の作業はほぼ完了した。

「時間は掛かりましたが…シルバさんが調べてくれた過去の不審死や死体の発見場所のデータ、そして半年前からのSNSでの白露刹那らしき人物の目撃情報、これらを統計してある場所に向かってる事が判明しましたよ!」

氷空は誇らしげにタブレットの地図をシルバに見せる

「ここは外人墓地です!ここに彼女はいる確率は極めて高いと思われます。今すぐ行きますか?」

氷空の言葉を受けシルバは立ち上がり黒いコートに着替え答える。

「わかり切った事を聞くな、今日でケリをつけるぜ」

自分の目標が達成されるかもしれない。氷空は不安とそれ以上に期待をし外人墓地へと向かう。




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