黒猫はVRMMOの世界を闊歩する〜レトロゲーマーなお嬢様のVRMMO体験記〜

魔王の手下

第1幕 初フルダイブ

 ――西暦206X年


 国産初となるフルダイブ式VRMMO『アーク・ファンタジア・オンライン』が全世界同時発売された。


 ユーザーには、『AFO』って呼ばれている。


 一人用のドーム型筐体に入り、専用ゴーグルを被る事でゲームの世界にフルダイブできるシステム。


 現実と変わらぬ質感の再現率と、幻想的な剣と魔法の世界観で人気を博すゲーム。

 発売二年目にはユーザー登録者数は2000万人にも及んでいる。


 今も専用の施設があり、常に満席状態だそうだ。

 筐体は学校やゲームセンターなど、様々な施設にも設置されている。


 ちなみに、パソコンと簡易式フルフェス式ゴーグルがあれば、自宅からでも接続可能。

 だけれど筐体と比べれば再現率は若干下がる。


「……はぁ。相変わらずやる事が派手なんだから、お父さんは」


 私の父親は、AFOの開発運営する会社の代表取締役。

 弱小だったベンチャー企業を巨大企業にまで発展させた人物だと、その業界では有名人。

 

 私には甘すぎる父親なんだけれどね。


 その父親が私の誕生日プレゼントにとくれたのは、ドーム型筐体。


 筐体にはピンク色の大きなリボンが巻かれて、誕生日カードが挟まれている。


 リボンの紐に差し込まれているのは、私宛の誕生日カードだ。


『誕生日おめでとう、我が娘・アリアへ愛を込めて。父より』


 この最新型の筐体からは新品の匂いが漂ってくる。


 お父さんに、間もなく完成すると散々聞かされていたから、それとなくコレがそうなんだと思う。


「私の誕生日だからって、最新型の筐体をプレゼントなんて……コレの事知ったら、サエコがすごく興味を示すだろうなぁ」


 ふと、親友でAFOのヘビーユーザーでもあるサエコが興奮する顔を思い浮かべて、くすりと笑いがでてしまう。


「座り心地は、思ったより悪くないわね」


 私はリボンを外すて、ドーム型筐体の中にあるシートに深く腰を落とした。

 意外と体型にしっくりとくる座り心地に、私は体が楽に感じる。


「……コントローラーらしきものは無いみたいね」


 普段はレトロゲームしかやらないから、コントローラーが無いと、なんとなく落ち着かない。


 私は付属のゴーグルを装着する。


「それじゃあ……人生初のフルダイブオンラインゲームを始めようとしますか」


 ゲーム内でしか遊べない希少なレトロゲームがあると言うサエコの情報。


 自称ヘビーなレトロゲーマーな私が、そんなゲームをやらないなんてあり得ない。


 私はそんな期待に胸を膨らませながら、ゲームをスタートさせた。


『シンクロニシティ確認しました……それではゲームをお楽しみください』


 AI音声が流れると私の意識はギュンと加速し、ゲームの中に引っ張られていく。

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