第100話 セントレイン
アンボートからビューンとセントレインまでひとっ飛び。
これでマーキングは完了。
パッと屋敷に戻ったのは、外に出てから10分後ほどのことだった。
「え……もうセントレインまで行って来たというのか?」
「そだよ」
獣人が信じられないといったように口をポカンと広げている。
俺も思っていた以上に早く到着したからビックリしたけどね。
「よし。じゃあすぐに行動に移そう。さっさとセントレインに――」
「私も行く!」
ドーンと扉を開けてターニャが登場する。
その勢いに獣人がビクッと体を震わせていた。
「い、いや……今回は遊びじゃないんだ」
いつも遊びではないけど。
「本当に危なそうだから、ついて来ちゃダメだ」
「話は聞いたけど、こっちに残っても危ないだけじゃん」
「確かにそうだけどさ……」
「アレン」
ケイトが俺を抱き、ターニャに背中を向ける。
「ちょっとケイト! 何してんのよ!」
「……あいつを連れて行った方がいいかも知れないぞ」
「何でさ?」
「どうなるかは分からないが、ネリアナを倒すことになるのは間違いないだろう。どんな奴だろうと、実の姉なんだ。そんなのが悲惨な目に逢うのは見たくないだろ?」
「……一理あるな」
これからネリアナとの戦いが始まる。
そして戦いの終幕は、ネリアナを倒さない限り下りないはずだ。
そんな場面をターニャには見せたくないな。
俺がケイトの言葉に頷くと、彼女はターニャの方に向き直り、俺を下ろす。
「一緒に行こうか、ターニャ」
「アレン……」
ターニャは感激した様子で強く俺を抱きしめる。
素晴らしい香りに指摘に柔らかい圧。
ずっとこうしておいてほしいところだけど、急がないと。
「サンデール、行こう」
「うん」
俺はサンデールと獣人、そしてターニャを連れて〈
到着した場所は、セントレインの船着き場。
ここは被害はあまり出てはいないようだが……人がいない。
獣人は〈
「全員、戦いにかり出されたからな」
「なるほど。で、魔王二人はどこにいるんだ?」
「セントレインの中央にある、ルーシャ。サンデール様の生まれ故郷であり、セントレインの首都だ」
「そうなんだ……サンデールって王子様だったんだよね?」
「らしいな」
「私の王子様は……アレンだよ」
「ふーん」
俺をギュッと抱きしめ、ターニャは愛おしそうな顔をしている。
本当にターニャがいたら、気持ちが引き締まらないな。
「ここは最南端にある村……ルーシャまでは結構時間がかかるぞ」
「だったら、また俺がそこまで行ってくるよ。その後にみんなを向こうに運ぶ」
「分かった」
俺はターニャから飛び降り、空中に舞い、全力で飛翔していく。
村を出た先は、まるでジャングルのようだった。
ジメジメと湿気が多く、蛇や虫などが視界に入る。
木々の間を縫うように飛び続けると、途中モンスターに遭遇した。
雷を帯びた猿、サンダーモンキー。
鶏のような頭に竜の翼を持つコカトリス。
俺の姿を視認するなり、多数存在するそのモンスターの方々は俺に襲い来る。
急いでるから邪魔しないでほしいんだけどなぁ。
仕方ない、軽くひねりつぶしてやる。
「〈
俺のデビルボイスにモンスターは次々に倒れていく。
敵を倒しながら飛び続けるのを止めることなく、突き進む。
だがモンスターは容赦なく襲い来る。
俺は嘆息しながら、〈
以前より強くなったのか、適当に撃った攻撃で軽々と一撃で葬ることができ、俺は自分の力に少々驚いていた。
メルバリーもン=ドウェンも吸収したからな……
どっちの腕力か分からないけど、さらにアレンの力が上がった!
なんて心の中でそんな声を上げながら敵を叩きのめして進んで行く。
百頭近いモンスターを叩くが、それでもモンスターは際限なく出現する。
一匹のサンダーモンキーが雷を纏い、俺に抱きつこうとしてきた。
「猿に抱かれても嬉しくないね。俺の方が――人気者だ!」
愛玩動物としてのプライドを持って、俺はサンダーモンキーを〈
あ、いや……愛玩動物じゃない。猫じゃないんだってば。
だけど本当に自分で猫を受け入れ始めてしまっている。
慣れって怖いよね……
俺は流石に辟易し、ジャングルの上空へと飛びがり、先に見える大きな町を視界に入れる。
そして――
一瞬でその手前まで〈
いや、最初からこうしておけばよかったんだ……
判断を少々間違えたが、時間はそんなにかかっていない。
町には人の気配はするものの、怖いぐらい静かであった。
そして、強大な力を二つ感じる……
どうやら本当に、魔王がいるようだ。
俺は先ほどの町に戻り、ターニャたちを連れてまたルーシャの入り口まで飛ぶ。
。
サンデールは町の様子を視認し、いつもの穏やかな表情から、真剣そのものの顔に変化させる。
「じゃあ、行くぞ、サンデール」
「うん」
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