第30話 メンバー決定
ほらな。やっぱ嫌な予感は当たった。
まあ次席らしいから、別に難しい推理でもなかったが。
「あ~あ、アオスってば羨ましいよなぁ~」
「何なら俺の代わりに代表戦に出てみるか、シン助?」
「えっ、いいの!?」
「良いわけがありません。アオス、あなたはクラスの代表なのです。その務めを放棄することは査定に響きますよ?」
査定……つまり冒険者の資格を得る道に傷がつくってことか?
だとするなら下手なことはできないが……。
「アオス、あなたは特待生でもあります。身勝手な振る舞いは己の首を絞めるということを覚えておきなさい」
「……了解しました」
ここは素直に頷いておこう。たった二年間のことだ。理不尽や不条理なことがあろうと、それくらいは我慢できる。何せ俺はもっと長い間、我慢を強いられる生活をしてきたのだから。
そんな嵐のような時代を乗り越えてきた俺だ。この程度、そよ風にしか感じない。
「では〝ダンジョン攻略戦〟ですが……」
「はいはいはーい! そっちは絶対に出たい! 出してくれー!」
「も、もうお兄ちゃん! 恥ずかしいから止めて!」
心中察するぞ、九々夜。
俺は真っ赤な顔を注意をする九々夜に心から同情していた。
「はぁ……他に出たい者はいませんか? ただしこれもまたクラス代表です。もし無様に負けてしまえば評価だって下がる。冒険者が遠ざかる可能性があるということだけは理解しておくように」
その言葉にクラスメイトたちが、挙げようとしていた手を下ろした。
皆、怖いのだろう。評価が下がるという言葉が。
ここにいる連中は、心の底から冒険者の資格を得たい者たちのはず。
評価が下がれば、卒業すらできなくなる可能性だってある。そうなれば夢は潰えてしまう。
それにBクラスも交えての合同実技で、相手の実力が何となく理解できただろう。
確実に勝てるという算段がなければ、負けた時のリスクを考えて尻込みしてしまうのも無理はない。
「あ、あのぉ……」
そんな中、一人の生徒が手を挙げた。
――九々夜である。
「おお! 九々夜も一緒に出るんだな!」
「だ、だって……お兄ちゃん一人だと心配だし……」
そうだな。シン助を扱えるのは妹の九々夜くらいだ。ストッパー役でもあるしな。
「……アオス、あなたに参加の意思はありませんか?」
「……はい?」
いきなりアリア先生からの提案。
「いえ、俺は代表戦の方に出ますし」
「あなたなら両方出ても問題ないかと思いますが? 何せ校長のお墨付きでもありますしね」
なるほど。俺のことは校長からも聞いているというわけか。
それにドモンズ先生の時もそうだったが、恐らく試験の一部始終を教師連中は全員知っていると考えた方が良さそうだ。
「……別に出るのは問題ないです」
負けると評価が下がる。ならば勝つと評価が上がるのであれば、出る価値は十二分にある。
資格試験の時に有利なポイントになるだろうし、断る理由はないだろう。
「そうですか。では最後の一人ですが……」
先生が教室内を見回し、生徒たちの顔をそれぞれ確認していくが、どいつも指名されたくないのか目を逸らしている。
そんなに負けるのが怖いのか。俺なんて前の人生で負けっ放しだったため、あまり気にしない。
「そうですね…………では、トトリ・ローダー」
「げっ、ア、アタシですか!?」
指名されて嫌そうな顔をする女子生徒。
青髪のポニーテールをした活発そうな印象を受ける。
「あなたは『魔法闘士』として、優れた成績で入学してきました。問題ないかと思いますが?」
「あーその……えっとぉ、アタシはあまり目立たず平和的に学校生活を終えたいなぁって思ってるんですけどぉ」
「この学校は実力主義です。やる気のない者は査定に大きく響きます。あなたも冒険者の資格が欲しくてココへやってきたのではないのですか?」
「そ、それは……」
何やら言い辛いことでもあるかのように目を泳がせている。
冒険者になりたくないとでもいうのだろうか? なら何故難関といわれる入試を受けてまで合格したのか意味が分からない。
「とにかくトトリ、あなたもここの生徒なら覚悟を決めなさい」
「うぅ……はい」
「よろしい。では〝ダンジョン攻略戦〟のメンバーも決まりました。明日からあなたたち四人は、放課後に合同演習を行います」
「……それは先生直々に、ですか?」
「何か不服ですか、トトリ?」
「い、いえ……わぁい、嬉しいなぁ」
全然嬉しそうじゃないが、どうもこの二人……相性が悪いのか? トトリは先生に苦手意識を持っているような気がする。何か前に接点でもあったのか……。
にしても……。
「うっしゃあ! 燃え滾ってきたぜぇ! 絶対にダンジョンなんちゃら戦に優勝して、一番星になってやっからなぁ!」
「も、もうお兄ちゃん! だから恥ずかしいから大声出さないでってばぁ!」
「うぅぅ……何でこのクラスなのよ……せめてBクラスなら良かったのにぃ」
三者三様、それぞれやる気のある者、やる気のない者など様々で、本当にこれで連携なんて取れるのかどうか心配だ。
それから俺たちは、毎日授業が終わった放課後に、アリア先生が出す課題をこなすことになったのである。
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