第93話 記録会初日

 満員の歓声の中、俺はユニフォーム姿でグラウンドに登場した。


 例年であればゴールデンウイークは、雨降りの方が多いんだけど、今年は快晴だ。

 風も穏やかで絶好のスポーツ日和だぜ。


 オリンピック当時より身体も一回り大きくなり、身体に密着したユニフォームは、俺の腹部のパックリ割れた6パットを目立たせる。

 

 普通のユニフォームは男子はランニングタイプが主流だけど、今回俺に用意されたユニフォームはTシャツタイプの物だった。

 上腕二頭筋の膨らみがこれでもかと強調されて、なんか俺的にも気に入っている。

 メーカー的にこの形の方が、ロゴが大きく作れるって言うのが、デザイン決定の決め手だったらしいけどね?


 いよいよ十種競技の最初の競技がスタートする。

 国際ルールで競技する順番は決まっていて、初日は


百メートル走   

走り幅跳び

砲丸投げ

走り高跳び

四百メートル走


 の順で競技が行われる。

 現在の世界記録九千百二十六点をどこまで超えるのかに、注目を集めながらスタートを迎えた。


 百メートル走で俺の出したタイムは9秒50だった。

 自分自身の世界記録には及ばなかったが、得点は1223点


 いきなりの超高得点に会場は総立ちだ。

 競技ごとに三十分以上の間を空けねばならず、二種目目に向かうまでの間に応援に来てくれている、高校の陸上部の人達の元へと行き、応援への感謝を伝えた。

 瀬古先生は大喜びで、背中と胸に大きくデザインされた高校の名前を、カメラに目立たせる。


 桜井先輩は、かいがいしくタオルで汗を拭いてくれるけど、それ絶対後で俺が困るから……


 二種目目の走り幅跳びも俺は世界記録を持っている。

 単独種目との違いは、十種では試技が三回しか飛べない事だ。

 俺はOCSCの時にこのルールは体験してるし問題無いぜ。


 この競技も、瀬古先生が少し付き添ってくれて、空中遊泳を七歩半を綺麗に足を動かせるようになった事で、危なげなく着地できた。最初に足が付いた地点よりも遠くにお尻を着地させる事で出た記録は、9.06mだった。


 WRの表示と共にいきなりの世界記録は、会場を沸騰させるのに十分だった。

 俺は二回目、三回目はパスを選んでそのまま記録は確定した。


 得点は、1342点


 今回は日本陸連の記録認定会で正式に世界記録が認められるけど、種目別に参加してる訳じゃ無いから、恐らく参考記録扱いかな?


 なんだか電光掲示板にも生放送で喋ってる解説の滝井さんが興奮してる様子が映し出されてたよ……

 続いて行われる競技は砲丸投げ。

 これも俺は世界記録保持者だけどね!


 一投目は、腰だめから力強く投擲し、少し角度が高かったかな? と思ったけど、記録は22m80cmセンチメートルのラインだった。

 得点としては十分なんだけど、観客的に世界記録求めてるよな? と思って二投目は前の大会の時に挑戦して失敗したグライド投法をした。

 これも瀬古先生と、砲丸をメインにやってる先輩がフォームだけはアドバイスして矯正して貰っていたので、ちゃんと投げれたぜ。


 記録は 23m45cm


 再びWRの表示が出たけど、参考記録だからね!

 気になる得点は1316点だった。

 ヤバイな、このペースで行くと一万三千点超えてしまいそうだ。


 観客席めっちゃ盛り上がってるよね!

 俺は、ちゃんと各種目が終るたびにジャージを桜井先輩に渡されて、羽織ってるよ。


 とっても目立ってるよね。

 瀬古先生も満面の笑みで、大げさに抱き着いて来るぜ。

 結構熱い人だったんだな……


 四種目目は走高跳だ。


 俺的には230cmまではパスしたい所なんだけど、今回の大会では、205cmで出場者が全員脱落しちゃったから、205cmをベリーロールで飛んだ。


 そして、一気に235cmまで上げてもらってクリアした。

 ここで辞めようかな? と思ったけど、会場の盛り上がりがそれを許してくれそうにないから、248cmを指定してみた。

 いきなりの世界新ラインに上げた事で、会場的には凄い盛り上がってる。

 

 そして会場を大きな手拍子が包み込んだ。

 助走を始めた俺は、ゆっくりとスタートして背中から鮮やかに飛び越えた。


 そこで試技を終了して確定させた。

 

 得点は1275点


 うん十分だな。


 応援席盛り上がってるよななぁ。

 そして休憩を挟んで本日の最終種目、四百メートル走のスタートラインに並んだ。


 セパレートコースでコーナーからスタートするこの競技は、俺としては公式競技では初めての挑戦になる。

 大外の八コースからのスタートで、最初から先頭に居るのって不思議な気分だよね?


『On your marks』


『Set』


 の声の後に号砲が鳴り響き、一斉にスタートを切る。

 俺は先頭のポジションを一度も譲る事なくトラック一周を駆け抜けた。


 電光掲示板に表示されたタイムは、WRの文字と共に


 42秒92を表示された。


 約五年ぶりとなる世界記録の更新だ。

 何度も言うけど参考記録だけどね!


 得点は1170点。


 同じように世界記録を出した場合、短距離走って比較的得点低いよね?


 初日を終えて、総合得点で6326点と他の選手を大きく引き離して首位に立っている。

 俺は、テレビ局のインタビューにサービス精神旺盛気味に付き合ったぜ。


 元日本大会優勝の、滝井さんと進学塾の森先生は、派手なジェスチャーで大喜びしてくれた。


「明日の競技は、公式には俺が経験のない種目が続くから、まだまだ不安で一杯です!」


 て思っても無い事を口にしたぜ。


 ◇◆◇◆ 


 初日を終えて今日は、明日の競技もあるからテレビ局へのお呼ばれも無く、帰宅できるけど瀬古先生が理事長から、食事代は領収書OKって言われてたらしくて、応援に来ていた部員全員を連れて、ファミレスへ連れて行ってくれた。


 昼ご飯抜きで競技してたからガッツリとステーキ食べてやったぜ。

 桜井先輩が横にピッタリ寄り添って来てて、他の先輩たちから凄い突っ込みをいれられていたけど、こんな姿アンナや香織が見たら、修羅場だぜ……


 綾子先生もGBN12の送迎で借りだされているから別行動だ。


 それでも夜の二十時頃にはアンナや香織もマンションに戻って来ていて、一緒に尋ねて来た。

「翔君? あの先輩とHな事とかして無いよね?」

「そんなの俺には不可能だから? 外では絶対色んな所からカメラに狙われてるからね?」


「ふーん、まぁ信じてあげるけど、私より先に他の女性とそんな関係になったら嫌だからね!」

「てかさぁアンナ、そんなの堂々と宣言されても困るからな?」


「それでも今日の活躍は凄かったよ!」って言って香織と二人で両側からほっぺにchuっとしてくれた。

 何だかドキドキしたぜ。


 その後は今日の疲れを癒しに、伊豆の本拠地に行って温泉に浸かった。

 当然の様に、美緒と綾子先生と香奈も来てたけどね!

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