第90話 魔王復活の兆し?
ちょっと学校での練習が時間を押しちゃって、綾子がアルファードで学校まで迎えに来てた。
アンナと香織も俺が陸上部の練習をしている姿を一緒に見ていた様で、同じ車に陽奈と一緒に乗り込んでいた。
「アンナ達ずっと見てたの?」
「うん、どうせこの後同じ番組だしね」
「翔君。随分先輩たちと仲良さそうにしてるよね?」
「え……そんな事ないよ。普通に初めての競技とか多いから、解らないとことか教わってるだけだよ?」
「背の高い先輩とか、自分が走ってる訳じゃ無いのに、やたら露出の高い恰好で嬉しそうにしてたよ?」
「きっと気のせいだよ、ほら今日は暑いし」
「まだ四月だし、そこまで暑くも無いよ?」
「そ、そうかな?」
なんだか、疑惑の視線を向けられながら、車はテレビ局へと入って行った。
十八時からの収録だから少しだけ余裕があったけど、番組のプロデューサーさんが俺の所へやって来た。
「松尾君、今度十種競技で世界陸上目指すんだってね? うちの局が放映する事になるから、色々協力して欲しいな」
「はい、別に協力する事は嫌じゃ無いんですけど、俺が勝手に返事しちゃうとマネージャーとエージェントから怒られちゃうから必ずマネージャー経由でお願いしますね」
「ははっ、それはそれで大変そうだね、まぁ本人から許可を貰ってるのとそうでないのとじゃ、全然話の展開が変わるから今はそれで十分だよ。ほら松尾君ってスポンサー企業が多いから、大人の事情的に出演決定した時点で視聴率云々は関係なしに黒字番組になる事が確定しちゃうからね」
「ああ、なるほどですね。そう言えば今日の番組って、十種競技の元日本選手権優勝のタレントさんも出演予定ですよね?」
「うん。そうだよ本人も楽しみにしてるよ」
「俺も楽しみです」
今年の俺の活動予定に合わせた、新曲を二曲披露するって言う事でGBN12も香奈は抜きで揃って居た。
冬本さんって、テーマが決まったら楽曲提供までの時間が以上に速いんだよね。
世界陸上バージョンと、アマチュアボクシングの世界戦バージョンのテーマの曲が出来上がっていて、内容は俺もまだ聞いて無いけど、きっと応援が盛り上がる様なノリのいい曲なんだろうね?
綾子先生には既に俺とGBN12が勢揃いの感じで、番組CMの依頼が入って来てるんだって、香奈の復活待ちですぐ撮影だって言ってたから、事件の動きも無いし一度合流させた方が良いかな?
番組CMが出来上がったら、俺のスポンサー企業がそれに便乗する形でCMを流し始めるらしいよ。
現在国内だけでも業種ごとに俺をスポンサーしてる企業が、十二社あるから、そこが全国的にCM流すと嫌でも露出増えそうだよね。
今泉さんの方には、アメリカ開催だからアメリカの番組CMの出演依頼も、俺のスポンサーメーカーの関係で入っていて、今回の世界陸上絡みのCM収入で一億ドルを超えるビッグビジネスだって言ってたよ。
番組収録自体は、芸人さんの番組MCの人がうまく元日本チャンプの人をいじり倒しながら、俺にも話を振ってくれた。
番組企画で競技場借りて、芸人さんの中で十種競技を争ってもらって、優勝者には世界陸上のインタビュアーの仕事を回すと言う、十種競技を盛り上げる為のイベントが発動したりしてたよ。
アメリカ開催だから現地でインタビュアー出来るのって、結構魅力的な企画だよね。
そして番組内で新曲二曲を披露したGBN12も当然の様に、アメリカへ応援に来ることが発表されていた。
まぁそれで日本が盛り上がるんなら全然OKだよね!
◇◆◇◆
番組収録が終って、みんなで食事に行く事になった。
今日はうちの事務所の所属タレントさんとマネージャーさんが、香奈以外全員揃って居たので、みんなでファミレスへ行った。
支払いは法人カードで綾子先生が纏めて払ってたので、みんな嬉しそうだったぜ。
でも十五人の団体で男が俺1人って、どんなハーレムなの?
パフォーマーのお姉さん達も東京での生活にも慣れて来て、それぞれ芸能課程のある学校への転入も済ませているので、今の生活が凄い充実してて楽しいって言ってた。
GBN12が後三年間の活動で終わっちゃうから、その間にそれぞれが得意分野を作って長く活躍できるようになれればいいよね!
マネージャーさんやパフォーマーのお姉さん達も全員が今は、俺の所持してるマンションでの生活なのでみんなでマネージャーさんの運転する車で帰宅した。
マンション内のトレーニングルームには、ダンスの練習が出来るような部屋も付属してるので、振り付けの練習なんかもマンション内で出来ちゃうって言う環境は、結構便利だよね。
◇◆◇◆
その日の深夜、ニューヨークで動きがあった。
現地ではお昼過ぎの時間だ。
大っぴらには報道等されて無いけど、カーネル大将がニューヨークでの異変はどんな些細な事でも、把握できるように手配をしていたので、すぐに俺にも連絡が入った。
俺は、とりあえず美緒とリンダと香奈だけを連れてカーネル大将の元を訪れた。
「状況はどうなんですか?」
「自由の女神の足元に三発の核弾頭が持ち込まれている」
「何か要求はあるんですか?」
「今の所は別に無いが、あれを爆発させられるとニューヨークは地図から消え去るな」
「取り敢えず核弾頭は回収してきます。犯人たちは前回の沖縄の様に消されてしまうと後を追えないので俺の方で引き取りますけど良いですか?」
「済まないが、それが一番正しい選択だろうな。よろしく頼む」
俺は『カラーレンジャーズ』のレッドのコスチュームに着替えてピンポイントで自由の女神の足元に転移して、三発の核弾頭を回収した。
そしてその場所に居たのは、人では無かった。
こいつらは魔族、それも高度な知能を持ち合わせる魔人と言われる部類の奴らだ。
以前、歌舞伎町に出て来ていたノスフェラトゥの『シルヴァ』と同類だ。
「この世界に何の用があって出て来た?」
「この世界には用は無い。いや、ちょっとはあるな。主な用があるのは勇者お前にだ」
「話は出来るのか? ここじゃちょっと都合が悪いから場所を移すぞ」
俺は三人の魔族の男を連れて、『ホープランド』へと転移した。
念話で状況を伝えると、香奈たちも転移門を使ってやってきた。
「俺に用があると言ったな? 何の用だ」
「力を貸せ」
「何故俺が力を貸すと?」
「翔君。私が説明するよ」
「香奈……いったい何を企んでいる」
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