第67話 プロアマトーナメント④

 プロアマトーナメントは三日目を迎えた。


 土曜日の今日は学校も休みだから、綾子先生も遊真と一緒に応援に来てた。

 GBN12のみんなは、お仕事モードで朝から握手会を開催してる。

 お昼はクラブハウス前でミニコンサートも開かれるんだって。


 そして今日は朝の九時から地上波放送でも夕方四時まで完全ライブ中継を予定されている。

 インターネット局は、放映権料が高すぎて予選の中継しか出来なかったんだって。


 お昼のGBN12のライブも完全に生中継で放送する予定だから、結構斬新な企画だよね。

 そして、今日のハンカチセットは二千セット用意され、俺のサイン入りは百枚しかないけど、GBN12の握手券が二百枚入っているんだって。


 ギャラリーも凄い人数が押し寄せていて、朝から大盛り上がりだぜ。

 昨日までで百人いた出場選手は、六十四人まで減っている。


 今回のアマチュア選手は、俺を含めて四人が残った。

 初日一緒に回った、真中さんと、佐藤さんは二人とも本戦に進んで来た。

 よかったね!


 もう一人は、高校生チャンピオンの西園寺さんと言う人だ。

 二日目終了時点で8アンダーと十位タイの位置に付けている。


 最終組のスタートになる俺は、アメリカ選手のケビンと日本のゴルフ界の貴公子、石見選手が一緒に回る。

 テレビカメラも、俺達には三台が付きっ切りで構えている。

 石見選手は騒がれなれているのか、さわやかな笑顔をギャラリーの人にも振りまいていた。


 ケビンは、一度もサングラスを取らないが、口元は笑みをたたえているので不機嫌な訳では無いよね?  


 今日もアウトスタートで、カップの位置は全体的に難易度の高い場所に移動している。

 今回は、全体的に予想スコアよりもハイレベルな戦いになっているんだって。

 主催者側としては、難易度を上げてスコアのインフレを防ぎたいらしいけど、俺はコースレコード狙うんだからね!


 トーナメントリーダーの俺がオナーだ。

 クラブハウスに近いこの一番ホールには、GBN12も勢ぞろいで声援を送ってくれている。

 ギャラリーの人達の半分は、俺を注目してるけど残り半分は、GBN12しか見てないよね?


 三日目になると流石にコースデータはしっかり頭に入っている。

 ドライバーを思いっきり振りぬき、グリーン手前、四十ヤードまで運んだ。


 ギャラリーから歓声が上がり、『お静かに』の看板を掲げた運営スタッフは昨日より増えて二十名くらいがこのパーティに付き添っている。


 俺のティショットに触発された二人は、負けずに飛ばしてきた。

 ほぼ横一戦に三人のティショットは並び、二打目を迎える。

 わずかに遠い石見さんからだ。


 サンドウェッジで狙ったアプローチはピンそば一メートルの位置に着弾したが、驚いたことに回転もかけていなかったボールは止まらずに坂を転げ落ちるような感じで、グリーンエッジまで転がって行った。


 ちょっと顔色が変わったのを見逃さなかったぜ。


「翔、ピン位置がかなりシビアだ。黛に先行してスタートした組の情報を集めさせる。アプローチするときに狙う場所を決めないと、グリーン上で苦労しそうだぞ」


 俺の耳元でそう告げた。

 取り敢えず石見選手のを参考にすると奥に向かって、かなりきつい傾斜になってるから、ピン奥から戻ってくるようなスピンを掛けて狙うのが正解っぽいな。


 先にケビンが第二打を放つ。

 ふわっと浮き上がるようなボールはピンに向かって真っすぐ向かったが、狙いがジャストすぎてポールを直撃し、大きくはじかれた。


 グリーンエッジ寄りのカップ位置だった為に、弾かれたボールはグリーンを取り囲むバンカーまで転がった。


 俺は、二人のアプローチをしっかりと目に焼き付け、ベストショットを狙う。

 カップ奥二メートルに着弾させ、スピンの効いたボールが坂を上ってくる。


 ピンそば三十センチメートルでピッタリ止まった。

 マーカーを置き、他の二人を待つ。


 ケビンのリカバリーはきっちりピンそば一メートルに付けた。

 石見選手の三打目はエッジからだがパターで狙って来た。

 十二メートルの距離を大きくフックする読みだ。

 芸術的とも言える弧を描きピンそば十センチメートルまで寄せた。


 流石だよね。


 ケビンが先にパーセーブを決め、俺がバーディートライを決めた。

 石見選手も、パーセーブを決め一番ホールを終えた。


 俺   3 -17

 ケビン 4 -15

 石見  4 -14


 倉田さんが、黛さんにスマホで指示を出し、二番ホール以降のベストアプローチポイントのリサーチを頼む。

 こういう時にはチーム力って大事だよなと思う。


 片岡さんとか今日は苦戦するかもだね。


 二番ホール 三百九十ヤード パー4


 左に大きく曲がったミドルホールだが、カップの位置がここも意地悪だ。

 フェアウエイからまっすぐ見えるグリーンを狙うと、カップの位置からは遠い。

 ここもフェアウェイは広めなので、出来るだけグリーンに近い位置を狙って、ドライバーをぶっ叩く。


 今日はテレビ局の企画で、俺の使っているのと同じゴルフクラブセットが、勿論俺のサイン入りでプレゼントなんだって。


 俺の今日のラウンドを何打で回るかを予想して投票するんだってさ……


 明日はもし俺が優勝したらの条件付きだけど、俺が今回の試合で使用したクラブセットをそのままプレゼントする事になってる。


 テレビ局も色々考えてるよね……


 後の二人は堅実にスプーンでのティショットを狙ってきていた。

 二打目がバンカー超えの着弾点にならない様に、フェアウェイの右側のポジションを狙い、二人とも狙い通りの第一打で、ケビンは鼻歌交じりで、石見選手はギャラリーに笑顔で手を振りながらの移動となった。

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