第58話 サラリーも必要だよね

 カーネル大将の家でのミーティングに行くと「ジョージ.W.フォスター」合衆国大統領にサインを求められると言う、びっくりイベントがあって美緒と綾子先生もさすがに驚いてたぜ。


 俺達は一度アフリカ拠点に集合して、済州島でのミッションを新たに受けたことを伝えた。


『COLOR RANGERS』は、先日のラスベガスの報道で世界的に存在が公になり、テレビ局の設置した『HELP掲示板』への書き込みも少なくない量の書き込みがある。


 掲示板に書き込まれた内容を、メンバーの半数以上の賛成で対処する事にしているが、俺達は決して公的機関ではないので、被害者救済はするけど、現行犯の制圧以外で相手を傷つけるような活動はしないと決めている。


 モンスターは別だけどね!


「翔、ちょっとこれ見てください。新しいユニフォームを提案したいです!」


 そう言いながらアナスタシアが満面の笑みで用意していたのは、某夢の国で使われている、キャスト用の着ぐるみだった。


「ナーシャそれ普通にアウトだから却下な」

「なぜですか? こんなにキュートで動きやすいのに」


「大人の事情だよ‼」


 デザインはオリジナルのものに限るって注意書きをナーシャには与えておこう。


 掲示板のオーダーもやってあげたいけど、今回は済州島を急いでやってしまおう。


 三千万ドルの依頼料だしね。


「ねぇ翔、今まで気にしてなかったけど、私たちのサラリーって決めて貰えないかな?」とビアンカが提案してきた。


「あぁそう言うのもちゃんと決めてないとだめだよね、命かけてるし。一週間二万ドルでどうかな?」


「ちょっといきなり多すぎない? 年間百四万ドルって日本円で一億円超えてるじゃん」


「別に俺達は慈善団体として、募金集めてるわけじゃないし、あるものは使わなくちゃ意味がないよ。自分達が我慢して人に奉仕するような行動なんて長い目で見たら続かないし、自分たちも楽しんで余力で人助けもしてもいいかな? くらいのスタンスじゃないと駄目だと思う」


 みんな、思ったよりもちょっと多めの金額で、一瞬時が止まった感じもしたけど、言い出しっぺのビアンカが「うちのリーダー結構太っ腹だねぇ、そんな好待遇なら、私の体も自由にしてくれていいからね!」


 マーに「ビアンカは自分がやりたいだけでしょ」と突っ込まれてた。

 俺もさすがにビアンカにお世話になるのは、まだハードルが高いぜ。


「ちなみに今言った金額は『COLOR RANGERS』としての報酬分だけだからな、それは現金渡しの非課税になるから管理は各自のマジックバッグでしてね。銀行に入れちゃうと脱税だのなんだの面倒な事言う連中が出てくるからね。美緒にお金は預けてるから、毎週月曜日に貰いに行ってくれ。報酬を断ったりするのは却下ね」


「「「了解ラジャー」」」


 少しでもやる気の向上につながるなら、お金も大事だよね。


「翔ありがとう。世界中の三ツ星レストランに、予約入れて通いつめれるわ。時間の都合の合う時は一緒に来てね」とアナスタシアもご機嫌だ。


 綾子先生も、中学校の先生ではありえない高給取りになっちゃったね。

 なんか口がパクパクしてるけど、まぁ落ち着けだ。


「じゃぁ、早速今週分は今から渡すね」と言って百ドル札百枚の帯付きの束を二つずつ全員に渡した。


「では、済州島に向かうよ」



 俺達は全員で済州島に転移して海岸線沿いに二班に別れて、船を沈めて回った。

 状態のいい船は、アイテムボックスに収納してアフリカで再利用する事にする。


 島内は、ゴブリンとオークがかなり溢れかえっているけど、適度に間引きも行いながら魔石の収集も行った。

 相変わらず魔素は確認できないな。

 

 三時間程で一通り終了したので、斗真さんに連絡する。


 「ミッションコンプリート。確認をお願いします」


 斗真さんへ連絡した後で、火口の中へ侵入して、ダンジョンの探索も始めた。

 中央部分に下へと続く階段を確認し、階段を守るようにオークジェネラルが、百体以上のオークを従えて守っていた。


 俺の魔法攻撃で一気に殲滅して二層へと向かう。

 ここからは、俺以外のメンバーで倒しながら三層へ降りる階段を探す。まだ異世界経験組は成長スキルを上げる事が中心なので、攻撃のメインは綾子先生とリンダとアナスタシアだ。


 俺が全員にバフをかけているので、二層ではだいぶ余裕もある。

 綾子先生の、ステータスを魔法攻撃中心に引き上げ、俺が魔法スキルを貸し出しているので殲滅系の魔法を使って、ゴブリンを虐殺してた。


 口元で何かつぶやきながら、魔法打ってるけど何言ってるんだろう? と思って聞き耳を立てると、歴代の魔法少女たちの、呪文を口ずさんでた。


 先生かわいいな!


 ◇◆◇◆ 


 週末を迎えて、土曜日はアンナとデートの約束だ。


 GBN12の活動もあるから夕方まで時間が空かないみたいだけど、俺も午前中は倉田さんと黛さんと番組スタッフの人達で、ゴルフ場に行く予定になってるから、しょうがないよね。


 アンナとの待ち合わせは渋谷にしたから、俺もちょっとわがままを言って東京近郊のゴルフ場でのラウンドをお願いしちゃった。


 俺のゴルフ初ラウンドは、パー72のホールを67のスコアで回る事が出来た。

 撮影班の人も、想像以上の成績にびっくりしてたぜ!


 倉田さんが、今日は俺のキャディーに専念してくれて、グリーン上のライン読みが的確だったから、俺は言われるとおりに打つだけ、って感じだった。


 黛さんは、普通にイーブンパーで回ってたよ。レギュラーティーからのプレーなのに凄いね。


 今日の結果を、倉田さんが会社に報告すると、一番近い時期に開催されるプロアマトーナメントに、主催者枠で俺の参加を捻じ込めるように手配をしてくれることになった。


 倉田さんのアドバイスによると、俺の場合飛距離も十分だしコントロールも問題ないので、アプローチと、サンドウェッジを使ったトラブルショット、それとパターの正確さを身に付ければトッププロとして十分にやっていけるって、お墨付きをいただいたぜ!


 ◇◆◇◆ 


 ラウンドを終えて早めに渋谷に出てきた俺は、今日アンナとどこに行くかを考えてた。

 中学生らしく、健全な感じで楽しめる所って意外に難しいんだよね。


 カラオケやゲーセンは、十八時以降は中学生以下での利用は建前上禁止だしね、中途半端に有名人になると行動枠が、大幅に狭まっちゃうよね。


 特に俺やアンナはテレビCMなんかに出てるから、コンプライアンス的な問題で、法令違反に関係するような行動は特に注意しないと、色々面倒な事になっちゃうんだよね。


 結局デートコースを決める事が出来なかった俺は、アンナにどこに行きたいか任せる事にした。

 アンナが希望する場所なら何とかするさ。


 そして、渋谷の駅前で待ち合わせてたんだけど、めちゃくちゃ人目にさらされて、アンナと合流する十六時頃には二百人程の人に囲まれちゃう状態になってた。


 そこに現れたアンナにも悲鳴に近いような歓声が上がり「どうするこれ?」と聞くと「どうしよう? 街中で待ち合わせは無謀だったね」


 でも、今更こそこそ行動するのは逆に変だし、開き直ってその場で宣言した。


「今日は、俺とアンナはプライベートな時間だから、みんな気づかなかった振りして、このまま解放してくださいね! 後、香織のSNSに二人でデートしてたとか、投稿するのは禁止の方向でお願いしますね!」


 と堂々と言うと、結構「「「了解です」」」という声が多かった。

 スマホでメチャ撮影されてたけどね。

 でも、香織は当然今日のデート知ってるし、言われても困らないんだけど、そう言っておいたほうが、なんとなく受ける気がしたから、言っておいたぜ。


 結局、俺達は渋谷から秋葉原に向かい、相変わらずゾロゾロ付いて来てるファンの子たちも多いけど、まったく気にしないで、秋葉原で普通にテイクアウトのデザートなんかを楽しんで歩いた。


 流石にアンナも、この状態でのデートは諦めたみたいで、十八時には俺がアンナを宿泊先のホテルに送り届けると、ホテルのラウンジでは香織、陽奈、香奈が他のGBN12の子達とお茶をしてた。


 みんな揃ってるのを不思議に思って聞いてみると、「アンナと翔の行動がさ逐一香織のSNSに呟かれてたから、みんなで次の行動予定を言い当てるゲームしてたんだよ」と言われた。


「こんなに人に囲まれちゃうと、何にも出来ないってのが良くわかって、いい勉強になったよ。東京怖いね」とみんなに向かって言うと、「安心してデートしたけりゃ海外でも行かないと無理だよね、もしくはホテルから一歩も出ないで、Hな時間過ごすとか?」と少しお姉さんな、パフォーマーなメンバーの人にからかわれた。


 折角GBN12のメンバーがみんな揃ってたので、来年の春から香織達メインの四人と俺の活動拠点が東京になるから、パフォーマーのお姉さんたちはどうするのかな? と思って聞くと、事務所の方でちゃんと把握してあって、全員東京の芸能コースのある高校に転校することが決まってた。


 香奈はまだ来年も中三だけど元々東京で暮らしてて、斗真さんが近藤家族の保護の観点で、名古屋に連れてきてただけだから、元に戻るだけだね。


 公務員として結構なエリートだった近藤の年金は、普通の生活を送るには十分な額があるらしいし、斗真さんも近藤の蓄財した資金には、国としてこれ以上追求をしないことにしたらしかった。


 まぁ仮にそれらを全部取り上げられても現時点で、香奈の『COLOR RANGERS』の収入だけでも週二万ドルあるから余裕だとは思うけど、表面上も俺のマネージメント事務所に所属している、陽奈、香奈の姉妹は毎月、百万円ずつの給料は、振り込まれてるしね。


 個人での仕事の多い、アンナと香織は一桁違うし、さらに俺はもう一桁変わるんだよな。


 でも俺の給料は、表面上はすべて両親に預けて、付き合いもあるから毎月十万円だけ父さんに貰って、やり繰りする事にしてるぜ。


 実際はアイテムボックスの中に常に米ドルで一億ドルと日本円で十億円程度の現金は入れてるし、美緒の会社と、父さんの会社の法人カードで、限度額無しでの買い物も出来るから、小遣い十万円はポーズだけどね。

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