第47話 ホープランド【後編】

 アフリカでの拠点も外壁と内壁を作り上げ町づくりの下地は出来上がった。

 この広大な土地の名前は『Hope Land』と命名し名前通りアフリカの希望の地となるように、開発に力を入れていくぜ!


 まだ壁以外は、サバンナの真ん中にテロリストの収容をする為に設置した巨大なホイホイ型の檻があるだけの土地だけど、開発工事が間に合わないようなら、日本からアパートを丸ごとアイテムボックスに入れて来て移設したりする、反則技を使ってもいいしね。


 俺のアイテムボックスだと一辺千メートルの立方体の容量だから、殆ど入らないような物は無いからな。


 築年数の古いアパートなんかだと、取り壊しを待つだけの状態で放置してあるし、「無料で撤去してあげるよ」と言うだけで、結構な数の物件が手に入りそうだな。


 俺の能力を活用したら、リペア系のスキルで新築同様の補修も出来るし、本当にやっちゃおうかな?


 ◇◆◇◆ 


 美緒の情報を基に『COLOR RANGERS』として最初の救助ミッションを行う事にした。


 イスラム過激派の流れを組むコンゴの武装組織が学校を襲い、生徒八十人を拉致して連れ去った事件だ。

 学校関係者は教員を含めて殆どがその場で殺され、男子は戦闘訓練を施され戦闘奴隷にされ、女子は性奴隷として扱われると言う、日本では考えられないような事件で、詳しい報道すら行われていない。


 マリアンヌを除く八名で集まり、コンゴ国内に転移で移動する。

 既に『COLOR RANGERS』のコスチュームに着替えている。


 綾子先生と美緒は戦闘経験は皆無なので、バックアップ要員として人質の救出をしてもらう。

『Hope Land』内に繋がる転移門を広げ、通り抜けてもらうだけなので、難しい任務ではないが、相手は完全武装の犯罪者だから気を抜くことは出来ない。


 俺達は軍隊や警察ではないし、例え相手がテロリストであっても、こちらから攻め込んで殺す訳には行かないので、武器を奪い戦力を削ぐことが目的になる。


「班を二つに分ける。ヤリマンスキー、マー、香奈、ビアンカで一班、転移とマジックバッグを使って、戦力を奪いまくってくれ、俺とリンダ、美緒、綾子は人質の解放を行う」


 全員に身体強化と、防御魔法をかけて、アジトへと突入した。

 ヤリマンスキー達はまず見張り台から攻め落としていく。


 転移で見張り台に移動すると、マーがマジックバッグを広げ、敵をバッグの中に放り込む事を意識すると、身に付けたものだけが収納され、素っ裸の状態の敵がそこには残る。


 ビアンカと香奈が手足を縛って拘束する。


「やだなぁ、汚い股間ももろに見えちゃうよ、もうチョット小綺麗な作戦にしてよねー」と香奈は文句タラタラだ。

「おい魔王。お前見た目子供っぽいけど実際にはこのメンバーで一番年上なんだから、それくらいの事でギャーギャー言うな」と、ヤリマンスキーが結構辛辣な言葉を浴びせる。


「ムカつくぅ、あんたの大きな一物がくっきりと浮かび上がってるのが、一番見た目汚いんだからね」

「俺の大事な聖剣を馬鹿にするな。熟年女性には圧倒的に受けが良いんだぞ」


 なんか低レベルな争いを繰り広げてるな。


「どうでもいい情報は、いらないからさっさと次に行って」とマーがちょっとキレてる。


「美緒、ここの敵勢力は全部で何人くらいだ?」

「詳しくは情報がないわ、恐らく三百人程度は居るはずよ」


 俺達も、捕虜にされている人達を探して、片っ端から転移で移動して、この集落内部の建物をくまなく調べていく。


 しかし今どき考えられないような環境だな。

 丸太のまま組み合わせて麻縄で縛っただけのような、お粗末な建物ばかりだ。

 雨漏りとかひどいだろうな。


 俺達はこの犯罪組織のアジトを徹底的に蹂躙し、結局敵勢力二百八十人にも上る数を一人も殺すこと無く裸で転がし、集落内に居る子供と女性は、美緒と綾子が『Hope Land』へと転移門で移動させた。


 「正義の鉄槌は下された。お前たちが再び犯罪行為を行うなら、次はお前達の命で償ってもらうアデュー」


 一番下っ端そうな、男一人だけを開放しナイフを一本渡し「これで他の奴らの縄をほどいてやれ、早くやらないと野獣に襲われて餌になっても知らないぞ」と伝え、俺達は転移で『Hope Land』へと帰還した。


 アフリカの秩序は、平和な日本人には想像もできないが、部族単位でのコミュニティで成り立っている場合が多く、より力を持つ集団が自分達より弱い集団を襲い、全てを奪うことなどはざらに起る事実だ。


 この集団はこの近辺では圧倒的な力を有し、今まで散々他の集団を襲ってきたんだが、すべての武器を奪われた状態である事が他の集団に伝われば、今までの恨みで攻め込まれるかも知れない。


 自分達がやって来たことへ対する報いだから諦めろ。


 ◇◆◇◆ 


『Hope Land』へ戻ってきた俺達は、まだコスチュームのままだ。

 取り敢えず、女性と子供を全て移送したが、純粋にさっきの集落の家族の者も居た筈なので、香奈の鑑定とビアンカの言語理解で、ふるい分けをして、先程の集落へ帰還を求めるものは、全員戻した。


 残った人数は、五十名程だった。


 このメンバーが『Hope Land』の最初の住人となり、アフリカの希望の地は動き始めた。

 

「しまった生活するための空間を用意してないぞ」

「幾ら安全だからって、何の建物もない場所で暮らせとか言わないよね?翔君」とマーが言うと、美緒が追い打ちをかけてくる。


「翔がそんなミスする訳無いじゃん、きっとなんか凄い裏技で何とかしてくれるよ」と言いだした。


 俺はちょっとだけフリーズしたぜ。


「何も考えて無かったの?」

「日本から取り壊し予定のアパートとかアイテムボックスで運んできても良いけど、許可も何もなしには出来ないだろ?」


「それは、普通に泥棒だよね?」

「あ、あそこがあったな!」


 俺は良い場所を思いついた。

 アナスタシアに連絡を入れ「チェルノブイリ近郊のプリピャチの街とか、勝手に更地にしちゃっても構わないか?」


 と聞いてみた。


「何する気なの? あそこはもう三十年以上放置されてるし、住所も無くなった場所だから、構わないわ」

「理由はまだ内緒だけど、その内教えるよ! じゃあ勝手に整地させて貰うね!」


 これで大丈夫だ。

 綾子とビアンカだけ留守番して貰って、取り敢えず俺のアイテムボックスから、当面の食料を出して、救助した人達に食べさせる様に頼んだ。


 残りのメンバーで、プリピャチの街に転移し、放置されている街から、学校の校舎を取り敢えず収納して、ホープランドへと移設する事にした。


 アパートみたいな個人生活用の物件より、今は集団生活用の建物の方が良いかな? と思っての判断だ。

 放射性物質の汚染も、キュア系統のスキルで浄化出来る俺なら、この街の遺産は有効活用出来るぜ!


 この際だから元々十五万人ほどの人々が暮らして居たこの街を、丸ごと移設してしまうのも有りかもしれないな。


 皆んなに渡してるマジックバッグでも、一辺百メートルの立方体が収容出来るし、俺が除染だけすれば、インフラも含めて完全移設してしまって、リペアして行けば、当面何の心配も無く街がつくれるぞ。


 後は発電施設とかを作れば、サバンナのど真ん中に街を出現させる事が出来るな。


 まぁ取り敢えずは、この学校だけで困らないから、皆んなに相談してみよう。

 俺は移設した学校のリペアを行いながら、さっき思いついた丸ごと街の移転を提案してみた。


「どう思う? 安上がりで良いと思うんだけど?」


 すると、美緒が微妙な表情で「翔の能力を公表してしまう事になるのはいいの?」と聞いてきた。


「あー、ダメだな……街を丸ごと移転とかスキルでやると、人外認定間違いなしで、普通の生活出来なくなるな」


 当面はこの校舎だけにしておくか……でも俺が表に出ずに、ヤリマンスキーとビアンカが能力者だと言う事にして、ある程度は誤魔化せるかもしれないな。


 「取り敢えずは、電気とか何とかしなくちゃならないから、美緒はリンダと一緒に、日本でディーゼル発電機とかの交渉をしてくれ」


 米軍での経験で、滞在拠点に関しての知識が有りそうなリンダを、美緒につけて当面のホープランドは動き出した。


 俺は、明日から四日間はチェコでモトクロスの大会だ。

 キッチリ優勝させて貰うぜ!

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