殺戮劇場
朝陽うさぎ
KARTE ルノアール page⒈
市民病院の精神科の一室。
つまらない。
機械的な言葉を繰り返し口に出して、10分程度、主治医の先生と会話したらおしまい。
受付で会計を済まして、あとは帰路につくだけ。
2つくらい市町村をまたいで、わざわざ30分以上も車の振動に揺られ、堤防沿いの草刈り機の音を聴き、植物独特の血液臭を嗅いで、車酔いしつつも詩を思いつくという行動すべてが。
飽きた。
私が感じるのは恐怖と、快感のふたつだけ。
あとは私の発する言葉に意味は込められてない。
ある漫画で、こんな文章を目にした。
「君の眼は
この言葉を境に、私は更に文字に、文学に触れるようになった。自ら触れようとした。
でも、やっぱり欲求は満たされない。
偽りの無い、綺麗な文字ばかり。
私は……もっと、黒く、血みどろに染まった文字を手にしたいというのに!
からっぽな時間は、あった。毎日。
それらを、私は費やした。
欲求を満たすために。
眼球をえぐる、手袋越しの感覚。
肉片を繋ぎ合わせる、針の痛み。
案外、時間は掛からなかった。
プライベートの時間にやって、10分ほどで終えてしまう。
もっと余興が欲しいほどに。
それは、自室の宝箱にしまっておいた。もちろん、誰にも見つからないように。
だけど、骸の目は、私が求めていたものじゃなかった。
たとえ、右目が義眼であっても、死んだ目を装着することは不可能に限りなく近い。それは、空虚が無い目は要らなかったから。
求め続けて、何人も手にかけた。何日も、狂ったように死体を漁った。
どのくらい時間が経ったのだろう。気がつけば私は16になっていた。
死体の匂いに敏感であっても、特に社会で生きていく上では支障はなかった。
高校に進学はしないで、墓守りの仕事に就いた。墓荒らしなどはしなかったのが不思議でしょうがない。
成績上では、中学生にしてもう十分だというほどの良い評価を貰うことが出来た。
時には、裏社会に入らないかと勧誘されたこともあった。しかし、丁重に辞した。
何故なら、この世界に理解者が現れたから……!
その方は、近くの教会の神父様だった。意外なことに。
救われたと実感する瞬間を味わうことが出来たよ。
墓守りの仕事をしながら、教会の地下で、話をした。
私と同じような人間も居た。子供じゃないか、と嘲笑していた。
あの人たちの目もつまらない。どうもこの世は感情で溢れているみたい。恵まれているみたい。
私と神父様、二人っきりで、言葉を交わした。静寂な、陽がわずかに差す地下室にて。
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